ページの先頭です。
このページの本文へ移動します。
テレビ会議のしくみ
テレビ会議のしくみ

第6部 標準化についてその3. H.323とH.320の比較

第6部 標準化について

その3. H.323とH.320の比較

*このコンテンツには連載当時(2004年)のままの情報が含まれます。ご注意ください。

市川さんから、IPネットワーク用勧告のH.323についてひと通りの説明を受けた曽我蔵くんは、さらにISDN用勧告のH.320との関係について訊いてみることにした。
H.323はH.320をベースにしているということと、IPネットワークのテレビ会議システムとISDN環境のテレビ会議システムは、H.320-H.323ゲートウェイを介して接続することはすでに理解している。

ISDN用勧告であるH.320

市川さん
「ところで曽我蔵くん。前回の繰り返しになるけど、前にテレビ会議システムで使用するネットワークの変遷について、1980年代以前のネットワークの主流は専用線で、1990年以降はISDNに取って代わり、2000年以降はIPが主流になったと説明したよね。
専用線からISDNに変わった理由は覚えている?」
曽我蔵くん
「はい。
1990年に、ISDNのマルチメディア通信システムを規定するH.320が成立したことによる……と、ノートに書いてあります。」
市川さん
「そのISDNは電話から発展した技術で、従来のアナログ通信を1と0のデジタル信号に変えて伝送をすることをISDNと呼ぶんだ。
ISDN回線には、BRIとPRIがあることも以前に説明したよね」
曽我蔵くん
「NTTが提供しているサービスでは、BRIは家庭や中小企業向けの『INS64(INSネット64)』で、PRIは光ファイバーを利用した大企業向けの『INS1500(INSネット1500)』だという話でしたね」
市川さん
「BRIの通信速度は144kbpsで、64kbpsの「Bチャネル」が2本と、16kbpsの「Dチャネル」1本で構成される。この方式は「2B+D」と呼ばれているんだ。
この64kbpsのBチャネル1本が、通常の電話回線の1本分に相当する。Bチャネルは情報チャネルとも呼ばれていて、主にデータや音声の送受信に使われるんだ。2本のBチャネルは独立しているので、誰かが電話で利用しながら、別の人がインターネットに接続するなどの使い方ができるんだよ。
一方、Dチャネルは発着信などの回線制御用データをやり取りするために使われるものだ。信号チャネルと呼ばれて、実際のデータ送信には使われない」
曽我蔵くん
「通常のISDN1本にはBチャネルが2本入っているので、2×64kpbs、つまり128kpbsの伝送速度になるんですね」
ISDN チャンネルの仕組み
市川さん
「次にPRIについて説明しよう。
『INS1500』のインターフェース規格であるPRIの通信速度は約1.5Mbps。『INS1500』は64kbpsのBチャネルが23本と、64kbpsのDチャネル1本で構成する「23B+D」方式だ。Bチャネルは主にデータや音声の送受信に、Dチャネルは発着信などの回線制御用データをやり取りするために使われる」
曽我蔵くん
「高速デジタル通信ですね」
市川さん
「アメリカやヨーロッパ、日本では、PRIの構成や回線の呼称が異なっていたりするんだけど、今回は違いがあることだけ覚えておいて欲しい」
曽我蔵くん
「分かりました。
でも、通信速度が1.5Mbpsある『INS1500』はまだしも、128kbpsしかない『INS64』は、2Mbpsや4Mbpsが主流となっているIPと比べると随分通信速度が遅いですよね」
市川さん
「その代わり、ISDNは接続中の帯域が保障されているし、複数のISDN回線を束ねてテレビ会議装置を接続できるんだ。『INS64』を2回線まとめて使用しすれば256kbps、3回線なら384kbpsになる。ちなみにうちの会社が扱ってる機器では、MAX6回線768kbpsだ」
曽我蔵くん
「まとめて使用すれば一度に送れるデータ量が増えて、テレビ会議システムのクオリティもあがるってことですね」
市川さん
「その通り。その代わり通信料金も2倍、3倍になってしまうけれどね。
電話のように、使った分だけ通話料金を請求される仕組みを従量課金制というけれど、テレビ会議をISDN回線で利用されているお客様にとって、海外支社との接続や長時間の会議による通話料金は頭の痛い問題なんだ」
曽我蔵くん
「コスト面は、どのお客様にとっても大きなテーマですからね」
市川さん
「さらにMAX6回線768kbpsを使用しても、結局IPより帯域は少ないので、ベストエフォート型とはいえIPの方が映像・音声品質が綺麗に出ることが多いかな」
曽我蔵くん
「なるほど」

ボンディング方式とは

市川さん
「ついでに、ボンディング方式について説明しておこう」
曽我蔵くん
「ボンディング方式?」
市川さん
「複数のISDN回線を使用してテレビ会議装置を接続するときに、ボンディング方式を使うと、1回線目のISDN回線番号にダイヤルするだけで他の残りの回線も接続できるんだ。
昔はボンディング方式がなかったので、回線すべての番号を入力して接続しなければならなかったんだよ。いまでもボンディング方式で接続するには、両方のテレビ会議装置にその機能がなければならないけどね。」
曽我蔵くん
「ボンディング方式でない場合、束ねてあればあるほど手間がかかるってことじゃないですか!」
市川さん
「でも、H.320の勧告にも含まれているし、現在発売されているテレビ会議システムにはほぼ搭載されているよ」
曽我蔵くん
「あ、そうですか。それはちょっと安心しました。覚えておきます」
市川さん
「それから、H.323とH.320のコスト面や安定性などについても、しっかり覚えておいて欲しい」

H.323とH.320の比較

H.323 H.320
月額固定 コスト比 従量課金制(通話料金がかかる)
ベストエフォート型 安定性 接続中は帯域を専有
日本・韓国など 現在のネットワークの主流 フランス、イギリス、イタリアなどのヨーロッパ諸国
H.320-H.323ゲートウェイを介して接続する 互換 H.320-H.323ゲートウェイを介して接続する
曽我蔵くん
「ところで市川さん。G722とかG.722.1とか、MPEG4 AAC-LDなどについても教えてください。 なんだか、僕の記憶の中で内容が曖昧になってしまって……」
市川さん
「それは音声符号化に関する内容だね。じゃあ次は、音声・映像符号化について説明しようか」
曽我蔵くん
「ぜひお願いします!」

曽我蔵くんは目を輝かせて、ノートを開いた。

1 2 3 4