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テレビ会議教室
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15.テレビ会議の将来テレビ会議教室

15.テレビ会議の将来

この「大久保先生に聞くテレビ会議教室」も、今回で最終回を迎えます。 前回までは、IPネットワークの抱える課題についてご説明いただきました。最終回となる今回は、テレビ会議の将来についてがテーマです。

現代社会におけるテレビ会議システムの役割とは何でしょうか。

大久保先生

私のNTT時代の上司で、現在は北海道工業大学にいらっしゃる渡辺先生がおっしゃるには、日本人はモノローグタイプで、西洋人はダイアログタイプだというんですね。
つまりどういうことかと言いますと、日本人は自分の内部と対話していろんなものを考えたり、知的な生産をやっているということです。一方西洋人は、他人と対話をして、そこで意見をぶつけ合って何かを生み出していく知的生産をするんです。言われてみるとそういうところがあるのかもしれないなと思います。一例として、ユニークな掃除機を提供しているダイソン社の創業者ジェームズ・ダイソン氏は、新製品開発のアイデアを研究所員との対話に求めていると語っていることを挙げることができます(日経ビジネス2006年1月16日号)。
テレビ会議はどちらかというと、何かを生産するために対話をするツールですね。
日本人にモノローグタイプという傾向があるのは確かですが、一方では「三人寄れば文殊の知恵」のような考え方もあります。
異文化がぶつかると新しい文化が生まれると言われていますし、ディスカッションすることで新しいものを生み出していく、そういう基本的な知的活動のツールがテレビ会議システムなんだと思います。


物事が複雑化して、かつ細分化しているのがいまの世の中ですので、その中から新たなものを見出す上で対話がかかせないのも確かです。お互いに刺激し合って何かを生み出していくには、対話が減ることはないでしょう。
従来よりも、ダイアログによって何か知的な生産が生まれるという方向に向っていると思いますので、産業的にもテレビ会議システムは今より大きくなるポテンシャルは持っているはずです。
ただ、どうやったら現在の産業規模を大きく変えられるきっかけが得られるのかが分かりません。それを明確に表現することは今はできませんけれども、期待はしています。

渡辺一央(わたなべ・かずひさ)氏

NTT研究所から北海道工業大学に移り、現在工学部情報ネットワーク工学科教授。高能率ディジタル伝送システム、ISDN、ファクシミリ通信システム、画像通信システムの研究開発に従事され,現在はニューラルネットの研究に取り組まれている。

今後はどの方向に発展していくと考えられますか。

大久保先生

テレビ会議も映像通信です。電話と組み合わせようというのが、これまで考えられていたテレビ会議の1つの発展アプローチなんでしょうけれど、今後はどうしていくかが問題ですね。考えられるものとしては、テレビなどの放送型のものと組合せる選択もあるかなと思っています。


私達はいま、同じ番組を見ながらみんなでワイワイ楽しむという機会が増えています。たとえばサッカー の試合のように、どこかの大きなスクリーンを見ながらみんなで応援するパブリックビューイングのことですね。そのようなことをテレビ会議でもできないか と、「Talk-together TV」と呼ばれるようなものを手がけているところです。


人の話しを聞く、人に話しをするというのは、基本的な欲求であるだけでなく、究極のエンターテイメントだと私は思っています。
テレビ会議では、みんなでディスカッションをしながらということになるんでしょうか。
いまは、ごく普通にPCの画面を見ながらディスカッションしたり、プレゼンを見ながらディスカッションしたりする時代です。だからテレビ会議の映像だけじゃなくて、ビデオをそこに出すのもありかなと思います。
そういう使用の広がりも、産業規模を拡大する上でのきっかけになりうるのかなと思います。あくまで1つの可能性です。

最近は、家庭でもメッセンジャーなどでビデオチャットを始める人が増えましたね。海外留学されたお子さんと話しをしているという年配の方がいらっしゃいました。

大久保先生

今では、テレビ会議は電話というより面談に近いメディアだと思います。家庭の中にいて、遠くの人と会うことをテレビ会議で 実現するには、テレビの上にカメラがあって、ソファに座ってゆったり話しをするというスタイルでしょうか。年老いた親の様子を見たいとか、孫と話したいな ど、需要はあるような気がします。


そういえば、天野祐吉さんという方が新聞コラムでNTT東日本のテレビ電話のCMを褒めていました。 CMの内容は、都会に住んでいる息子一家と田舎で一人暮らしをしている父親が、テレビ電話で会話をするというものです。息子が風呂からあがってくると、テ レビ電話のこちら側では幼い子どもが、向こう側では父親が眠り込んでいる。「ああ話しながら眠ってしまったんだな」と、テレビ電話の画面をコツコツ叩いて 父親を起すんですね。
天野氏は「遠く離れていてもひとつ家に住んでいるような気分にしてくれるテレビ電話の効用が、さりげなく表現されているところがとてもいい」と評価してい ます。「画面の向こうにもうひとつ個室がふえたような感じになるところが面白い」とも書いていて、なるほどと思いました。


相手の映像があると、安心して、落ち着いて話ができるという効果があると思います。音を聞くだけだと、相手の様子が分からないので集中力が切れるというのがありますね。極端なことを言うと、相手が一瞬眠っていても分からないわけですから。
音を聞くのは話の内容を理解するためと考えると、存在感や現実感を伝えるのが映像の役割なんだと思います。

天野 祐吉「個室がふえる」

引用資料:2005年2月17日朝日新聞/CM天気図

ありがとうございました。

これまで15回の長きに渡って、大久保先生の貴重なお話しを伺ってきました。テレビ会議システムの将来がどうなるのか、非常に楽しみです。
また末筆ながら、大久保先生のこれからのご活躍をお祈りいたします。先生、ありがとうございました。

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