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第6回「“ビジュアルの力”で遠隔教育の未来を拓く」
神戸情報大学院大学 田村 武志教授 1/3

日本の遠隔教育・遠隔講義は諸外国から遅れを取っていると言われながら、我が国でも浅からぬ歴史を重ねてきました。対面で行われる講義やセミナー、シンポジウムの代替として遠隔地同士を接続して開催されると捉えられがちですが、遠隔教育システムは本当にそのためだけにあるのでしょうか。
VTVジャパン2013年新春特別対談では、神戸情報大学院大学 田村武志教授をお招きし、「国内外における遠隔教育の現状と未来」をテーマに、弊社代表の栢野がお話しを伺いました。

神戸情報大学院大学 教授 田村 武志氏mark01ゲストプロフィール

神戸情報大学院大学
教授 田村 武志氏 (たむら たけし)

東海大学電気工学科通信工学専攻卒業。東京電機大学理工学部研究生(情報システム工学)修了。工学博士。
KDD(現KDDI)およびKDD総研・主任研究員、大阪府立大学教授を経て現在に至る。国際コミュニケーション概論担当。大阪府立大学名誉教授。

【論文および特許等】
電子情報通信学会、日本e-Learning学会、IEEE(ICALT)等の論文多数。遠隔教育システムおよび電子テキストに関する特許など。
著書:『図解・情報通信ネットワークの基礎(第2版)』、『ネットワークスペシャリスト』(共著)、『インターネット教科書』(共著)、『インターネット用語辞典』(共著)、『新農業情報工学』(共著)など多数。


音声認識や電子黒板など、十数年前の取り組みがやっと世の中に普及してきた気がします
栢野
私が初めて田村教授にお会いしてから、かれこれ15~16年になります。ちょうど教授が大阪府立大学の教授に就任されて、遠隔教育に取り組み始められた頃だったと記憶しています。
田村教授
そうですね。私は通信企業に勤務しておりましたが、大学に転職し、ちょうど研究室を立ち上げる時で、栢野社長には大変お世話になったことを覚えています。企業では、ネットワークや衛星通信、海底ケーブル通信関係の仕事に従事していました。大学でも企業経験を生かして、「情報システム工学」や「情報通信ネットワーク」を専門としています。企業在職中にエンジニア教育も担当していた経験から、効果的に教育を実践する「教育工学」という比較的新しい学問にも興味を持ち研究してきました。最近では、学習者が主体的に、自主的にしっかりと目標を定めて楽しく学習するという部分にスポットをあてて研究・実践をしています。
栢野
田村教授は日本では遠隔教育の第一人者でもあります。教授が「音声認識による自動切替装置」を開発なさったのは2000年頃でしたね。
田村教授
田村教授はいそうです。これは、講師が遠隔講義を行う際に、リモコン操作は一切しないですべて講師が発話した声、すなわち音声認識ですね、それで機器の自動切替を行うというシステムを開発しました。

簡単に説明しますと、講師が学習者を前にして「皆さん、それではPowerPointで説明します」と言うと、その音声を認識し、自動的にモニター映像が講師像からPowerPoint画像に切り替わるんです。「それでは皆さん、これからビデオをお見せします」と言うとビデオ画像が伝送されます。「それでは黒板で説明します」と言うと板書の情報が伝送されるという仕組みです。すなわち、「それでは」と「PowerPoint/ビデオ/黒板」という2つのキーワードを認識し、切り替えます。

講義中、講師は講義に集中しています。その最中にリモコン操作をしながら講義を続けろと言っても、それは難しい注文です。そこで講師が自然体で講義に集中できるように「音声認識による自動切替装置」を開発したのです。いままでの研究で一番思い出に残る研究成果です。
栢野
「音声認識による自動切替装置」は、私にも非常に強い印象が残っています。
いまではスマートフォンなどで音声検索するシステムが普及してきましたし、ペーパーレス化の影響か、最近また電子黒板も注目されてきています。電子黒板が小型化したのがタブレットPCという気もしますし、なんだか教授が取り組んでいらしたことが一般的になってきた、世の中に普及し始めてきたという感じがしています。
テクノロジーは飛躍的に高機能化されましたが、教授法は昔と全く変わっていません
栢野
遠隔教育は、やはり世の中がアナログからデジタルに変わった時に大きな変換点を迎えたのだと思いますが……。
田村教授
アナログ時代には、画像圧縮・音声圧縮はできませんでした。デジタル時代になったことによって、画像信号や音声信号を圧縮し、効率よく送ることができるようになりました。しかし、デジタル化当初はまだ光ファイバがない時代で、主にISDN回線を使用していました。当時のISDN回線は64kbpsから128kbps程度と回線速度が非常に遅く、またISDN回線を1時間借りると数万円かかるなどコストも非常に高い上に、低帯域のため画像品質がいいとは言えませんでした。そのため遠隔講義が普及するのは難しい状況だったのです。
しばらくするとコンピュータや半導体技術が飛躍的に進化して、高性能・小型化が実現しました。信号圧縮装置(CODEC)も低価格になり、かつ高画質になり、形も小さくなりました。さらにインターネットが高速大容量になり、日常生活の中でも手軽に気軽に使えるようになりました。これで遠隔教育のインフラが整い、こんにちの遠隔講義や遠隔教育が実現できるようになったのです。
しかし、課題はまだ残っています。「テクノロジーを100%活用して教育をいかに効率よく、効果的に実現するか」という教育方法―我々は「遠隔教育教授法」と呼んでいます―、その部分は昔の方法と全く変わっていません。テレビカメラの前で講師が一方通行的に講義を行い、それを遠隔地の学習者が黙って聞いているという状況です。これはなんとかしなければなりません。
栢野
栢野弊社がこのビジネスを始めた頃に海外のメーカーと話を進めていると、会議以外の使用用途として「教育」や「ディスタンスラーニング」という言葉が彼らのキーワードとして必ず出てきたんですが、日本ではテレビ会議システムの用途に「教育」という視点がなかなか入りませんでした。

ここ最近では、コンシューマーレベルではSkypeを使った英会話教室という取り組みが見られるようになってきて、やっと遠隔教育が一部の特殊機関が行う教育手法であるという考えから、誰でも手軽に利用できる教育方法だという印象になってきたと感じています。海外の遠隔教育状況と日本のそれとを比較すると、やはり違いはあるのでしょうか。
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