その2.IPネットワークの種類と条件
*このコンテンツには連載当時(2004年)のままの情報が含まれます。ご注意ください。
前回曽我蔵くんは、市川さんにテレビ会議システムのネットワークの変遷を教えてもらった。
市川さんによると、ネットワークの主流は専用線からISDNへ、さらにIPネットワークへと移行してきた。海外ではまだISDNでの利用も多いが、日本では新規・リプレースユーザーのほとんどがIPネットワークを選択 している。



IPネットワークの種類と特徴
IP-VPN
キャリア(通信事業者)が独自に構築した閉域IP網を介して構築されたものをIP-VPNと呼び、IP-VPNを経由すると遠隔地のネットワーク同士をLANで接続しているのと同じように運用できる。(ちなみに、インターネット上で実現されるVPNをインターネットVPNと呼ぶ)インターネットを介さないIP-VPNは、セキュリティや通信品質を向上させることができる。
IP-VPNサービスとしては、IP網上にネットワーク同士を直結する仮想専用線を構築するものと、仮想ルータを提供してルーティングまでを引き受けるものがあり、後者のサービスが特に注目されている。
広域LAN
ワイドLANサービスとも呼ばれる。同一収容局内エリアをLANで接続できるサービス。
Ethernetで使用されているスイッチングハブ(レイヤ2スイッチ)を組み合わせて構築する。スイッチングハブはルータ(レイヤ3スイッチ)と比べてコストが低く、メンテナンスの手間が少ない。さらに、多対多の接続が簡単に行えるといったメリットがある。
インターネット
ブロードバンド化と低価格化が進んでいるが、品質保証が一切ない。


一方インターネットは、低コストですむがセキュリティが問題だ。
曽我蔵くんは、セキュリティといったら何が浮かぶ?


PCベースのテレビ会議環境を使用している場合には、パソコンと同じセキュリティ対策が必要になるんだ。
でもテレビ会議専用機の場合には、専用OSなのでウィルスに感染する可能性は極めて低い。だから、パソコンのようなセキュリティ対策は必要はないんだよ。パケットの漏洩に関しては、パケットの暗号化やVPNによる暗号化で対策を施している。
暗号化についてはまた改めて説明するとして、インターネットを使ったテレビ会議システムでの一番の課題はFW/NAT越えなんだ
IPネットワークが主流になった理由


プライベートネットワーク内はFWによって、セキュリティを確保するのは常識だ。しかし、テレビ会議システムのような相互接続システムの場合は、FWのポートを空けておく必要がある。そうしないと、先方から送られてきた映像と音声が弾かれてしまうからね。
NAT(Network Address Translation)は、1つのグローバルIPアドレスを複数のコンピュータで共有する技術のことだ。プライベートネットワーク内でのみ通用するプライベートアドレスからインターネットへ出る際には、NATによってグローバルアドレスへの変換が行われるんだけれど、このアドレスの変換を行なうためにはH.323通信では不可なんだ


解決策としては、以下の3つが考案されている
H.323機器による対応
- NATテーブルに静的登録を行う
- H.323機器からNATテーブルを操作(UPnP)
H.323Proxy/ ALG/NAT装置による対応
- H.225.0/H.245などのアドレス変換機器自身で行う
- H.323のプロトコルを直接ハンドリングし書き換えを行う
Session Border Controllerh
- グローバル/プライベート間で特別なセッションを構成し、その両端でH.323プロトコルを書き換える

今後この勧告に対応した製品が出てくるだろうね
帯域
アプリケーション処理サイズの1.4倍の帯域が必要
例)384kbpsでテレビ会議より通信を行う場合
アプリケーションは映像と音声データを最大384kbpsで処理する
IPヘッダーなどの付加情報がプラスされ、1.4倍になる(384kbps×1.4=537.6kbps)
上下対象通信を行うため、上り下りのそれぞれに同帯域が必要
パケット遅延
遅延は150ms以内、ジッタ(パルスの時間的な揺らぎ)は35ms以内に
映像・音声を支障なく伝達するために必要な条件
ネットワーク上でバースト・トラフィックが発生した場合には、通信パケットの到着が遅れ、映像・音声が乱れる可能性がある
パケット耐性
目標は1%以内に
パケットロスが発生した場合、映像・音声の「途切れ」が発生する。また、著しくパケット・ロスが多い場合には、通信が切断されることもある。


テレビ会議システムにインターネットを利用するには、それぞれの特徴を理解することが必要だ。インターネットといっても、ADSLやFTTHでも違うからね
曽我蔵くんは「はい」と答えながら、自分はゲームだったらまだまだ序盤にいるんだなと感じて、こっそりため息をついた。