その2. H.323とは(IPネットワーク)
*このコンテンツには連載当時(2004年)のままの情報が含まれます。ご注意ください。
市川さんを相手に、標準化について質問していた曽我蔵くん。
テレビ会議システムをIPネットワークで使用するときのプロトコルH.323について、さらに詳しく教えてもらうことになった。
現在のネットワークの主流はIP


2002年頃にネットワークの主流がISDNからIPへ移行し始めて、現在はその混在期・移行期にあたるということでしたね。いまの日本では、新規導入ユーザーとリプレースユーザーの95%以上がIPネットワークを選択しています

ここまでは前回のおさらいだ


QoS保証とは、ネットワーク上である特定の通信のための帯域を予約して一定の通信速度を提供したり、パケット損失を決められたレベル以下に保ったりする技術のことを指す。音声や動画のリアルタイム配信やテレビ電話・テレビ会議など、通信の遅延や停止が許されないサービスにとって重要な技術だ

H.323とは

H.323がIPネットワークで使われるプロトコルだという説明はしたね。QoS非保証型のIPネットワーク上で音声・映像・データをどのようにリアルタイム通信するかについて、ITU-Tが承認・勧告したものがH.323だ


けれども、H.323が用意しているプロトコルの働きによって、リアルタイム通信として許容できる品質が得られるんだ。
また、H.323はISDN用勧告であるH.320をベースにLAN対応にしたのが特徴で、H.320-H.323ゲートウェイを使用すれば音声・映像を変換符号化せずに相互接続できる。
つまり、H.320やH.323という国際標準規格に準拠しているシステムであれば、ISDN回線で接続したA拠点とIPネットワークで接続したB拠点間で相互接続できるという意味だね


H.323の機器構成
- H.323端末
テレビ会議システムのほかに、IP電話(Voice Over IP)やパソコンのH.323アプリケーション(MicrosoftNetMeetingなど)がある。
- ゲートキーパー(H.323端末制御、管理)
- ゲートウェイ(H.323-H.320相互接続)
- MCU(多地点接続装置)
- HUBやルータなど、IPネットワークを構成する機器


IPネットワークとISDN環境のテレビ会議システムとは、H.320-H.323ゲートウェイを介して接続することは分かりましたが、その他にH.320と関係することはあるんですか?
曽我蔵くんの質問に、市川さんはそれはねと説明しはじめた。
教育担当の市川です。
テレビ会議のプロトコル、H.323ついての内容でした。
テレビ会議を語る上で基礎となるのでおさらいをしましょう。
A. H.323とは、ITU-T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)より勧告されている、LANやインターネットなどのIPベースのネットワーク上で、音声、映像、データといったマルチメディア情報をリアルタイムで提供する国際標準規格のことです。H.323はシステム全体を規定した標準で、音声符号化、映像符号化、マルチメディア多重、通信制御など個々のシステム構成要素技術はそれぞれの標準を参照しています。H.323によるサービス例として、テレビ会議やVoIPなどがあります。IPネットワークが普及された今では、販売されているテレビ会議専用機のほとんどはH.323を搭載しています。
A. H.323はIPネットワークで使われるプロトコルです。H.323の特長は4つあります。1.相互接続性を確保することができること 2.ネットワーク構成から独立していること 3.オペレーティングシステム・アプリケーションソフトウェアから独立していること 4.メッセージはバイナリ形式(コンピュータが直接的に処理するために2進数で表現されるデータ)を採用していることです。IPネットワークは “QoS(Quality of Service)非保証型”のネットワークです。QoS非保証型のIPネットワーク上で音声・映像・データをどのようにリアルタイム通信するかについて、ITU-Tが承認・勧告したものがH.323なので、H.323に準拠しているシステムであれば、H.323が用意しているプロトコルの働きでリアルタイム通信として許容できる品質が得られます。
A. プロトコルとは通信規約を意味します。電気通信の世界では送り側と受け側でメッセージをやり取りしますが、それがうまくゆくためには、いかにメッセージを表現するか、その結果をいかにして通信チャネルに乗せるか、受信した信号からいかにして元のメッセージに戻すか、制御コマンドを受信したらどのように動作すればよいか、通信チャネル上の雑音などで予期しない事態が発生したらどうするか、など多岐にわたる規則を送信側と受信側で共有することが必要です。これら個々の通信規約をプロトコルと呼びます。テレビ会議システムで使われるプロトコルは、H.323やH.320があり、H.323はIPネットワーク、H.320はISDNで使われるプロトコルです。
A. H.323の機器構成を説明します。H.323端末:テレビ会議専用機のほかに、IP電話(VoIP:Voice Over IP)やパソコンのH.323アプリケーションがあります。ゲートウェイ:H.323とH.320の相互接続を実現します。ゲートキーパー:H.323テレビ会議専用の制御や管理します。MUC(Multipoint Control Unit:多地点接続装置)とは3拠点間以上を接続する多地点間テレビ会議を実現するための装置です。その他にHUBやルーターなど、H.323に準拠したIPネットワークを構成する機器があります。
A. H.320とは、1990年にITU-Tが定めたISDN(ntegrated Services Digital Network)を利用したテレビ会議などの端末の仕様を勧告された規格です。ISDNは電話から発展した技術で、従来のアナログ通信を1と0のデジタル信号に変えて伝送することをISDNと呼びます。インターネットの普及により利用者が減り、NTTは2024年にサービス提供を終了すると発表しています。H.323とH.320の違いを解説します。コスト面は、H.323で利用するIPネットワークは月額固定なのに対し、H.320は使った分だけ通話料金を請求される仕組みの従量課金制です。また、安定性はH.323はベストエフォート型に対し、H.320は接続中は帯域を専有できるメリットがあります。