「コミュニケーション」と「IT」はどうつながっていくのか。日本の働き方とは

知る・学ぶ対談
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第1回 GiRAFFE&Co.×VTV ジャパン対談

現在日本で推進されている働き方改革は、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少や、育児や介護との両立など働く人のニーズの多様化といった社会課題の解決が目的です。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大によってリモートワークや在宅勤務、BCP (事業継続)対策が緊急性を持って急速に進められようとしています。

Webマーケティングソリューションを提供する株式会社GiRAFFE&Co.様は、VTVジャパン株式会社の提携先として、長年の間、支援やご協力をいただいています。打ち合わせやミーティングなどでは、弊社も含め、さまざまな企業とWeb会議を利用する機会が増えているといいます。業務でWeb会議を利用するユーザーとしてのご意見をお聞きしながら、代表取締役の吉澤 宏充氏が考える「働き方」、「社会課題」への思いを、弊社代表の栢野がお話を伺いました。

プロフィール

株式会社GiRAFFE&Co.(ジラフ アンド コー)
代表取締役 吉澤 宏充
https://giraffe-co.jp/
Webマーケティングの課題を独自の視点で解決するWebマーケティングソリューションカンパニー

株式会社GiRAFFE&Co.(ジラフ アンド コー)

経営資源は「ヒト・ヒト・i(アイ)」

ジラフさんとは長いお付き合いをさせていただいていますが、企業理念をかしこまってお聞きしたことがありませんでした。ぜひそこからお話をお聞きできればと思います。

経営資源はひと昔前には「ヒト・モノ・カネ」と言われ、21世紀になって「情報」が加わり「ヒト・モノ・カネ・情報」と言われるようになりました。そこから更に現在では「ヒト・ヒト・ヒト」、経営資源はとにかく「ヒト」だと言われています。
私なりに言えば、経営資源は「ヒト・ヒト・i(アイ)」だと考えています。

VTVジャパン株式会社 代表取締役 栢野 正典
VTVジャパン株式会社 代表取締役 栢野 正典

i(アイ)はいろんなi(アイ)があります。たとえば「アイディア(i-dea)」だったり、「ノウハウ(i-nterigence)」だったり、「情報(i-nformation)」「イノベーション(i-novation)」、そして「発明(i-nvention)」。そういったi(アイ)を持ったヒトが集まってこの掛け算であることが経営資源だと考えています。i(アイ)を持ったヒトは吸引力があると思っていて、そういった人が集まることによってさらに新たなi(アイ)が生まれます。

確かに、私もこれからますますi(アイ)の部分が大事になってくると思いますね。特にアイディア。そのアイディアを個々が一人だけで持つのではなく、一人のものをシェアし合うことで、新たなものやそれが触発されてさらに違ったものに変わっていって、更に編集されたり加工されたりすることが起こると思います。
アイディアというものはヒトの中にあってヒトが作り出すものであり、アイディアの源泉としてヒトがいて、集うことでアイディアが持ち寄られ、それを交換し合うことで価値に代わっていくということもできますね。

そうですね。i(アイ)の増殖のようなものが起こると思っています。
かたや“モノ”や“カネ”はどうなのかというと、私達の業界では、今の時代はあまりモノを使わない。働く場所は必要だけれど、パソコン1台とアイディアがあればモノはあまり必要ないように思います。

必要な“モノ”をあげるとすれば、例えばテレビ会議システムなどのコミュニケーションツールですね。“カネ”はというと、実はi(アイ)があればカネはついてくると思っています。

いいアイディア、イノベーションがあればむしろ“カネ”は勝手に集まってくる。なので、経営資源がヒト・ヒト・アイであると考える所以です。それをデジタル領域で広げていくことを考えています。

ヒト・ヒト・アイを公式に置き換えると、次のように表すことができます。

コミュニケ―ションの公式

このi(アイ)が別の人のi(アイ)と掛け合わされてさらに違ったiに変化していき、ひいてはそれが社会価値につながる。そういった社会価値が生まれるためにはコミュニケーションが重要ということですね。式で表した「×」がコミュニケーションに当たります。

当社はコミュニケーションで社会に貢献する企業です。つまりこの公式は、当社の事業理念である「コミュニケーションをデザインする」につながっていきます。

社員全員が会社・組織という道具(モノ)を使って、それぞれが役割を担って価値を生み出していく。
その中で共にコミュニケーションを深めることで、個人個人の成長も促されていくと思っています。

実は社内でもコミュニケ―ションを四苦八苦デザインしながらビジネスを進めています。
どうやって仕事を進めていくか、どういう風にしてコミュニケーションをとっていけばよいか、ということをことあるごとに議論していて、それが価値を生み出す土台になっていくと考えています。

社内が実践の場で、そこから生み出されたものを社会に対して、「こういうやり方でやるとこういう成果が出る、コミュニケーションができるぞ」ということを発信しているわけですね。

はい、その中でキーワードとして入ってくるのがやはり「コミュニケーション」です。
アイディアを持った人たちがディスカッションすることによって新たな気づきが生まれてそれが成長につながる。
ジラフさんと当社はそういうところが似ていますね。

目指すべきことは、イノベーションを生み出せる人材を増やすこと

一般的に厚労省が言及する働き方改革は、勤務時間の短縮など仕事量の削減にフォーカスしている気がします。企業からすると一人あたりの生産量の減少と考えがちではないでしょうか。そうではなくて生産性を向上させ、仕事の質を上げるというところにフォーカスをおいていくべきです。
日本の生産性は40年以上の間先進国の中で最下位を記録しています。
モノづくりやひとつの作業を行うという面では日本人はパフォーマンスを発揮しますが、イノベーティブであるとか働き方という面は非常に弱いのではないかと疑問を感じたことがあります。

株式会社GiRAFFE&Co. 代表取締役 吉澤 宏充氏
株式会社GiRAFFE&Co. 代表取締役 吉澤 宏充氏

そうですね。日本の生産性が低いことについては、いろいろ意見はあります。定量的に見れば低いかもしれませんが、定性的にみれば日本の仕事の成果は高いと捉えることもできると個人的には思っています。
言わなくてもそれ以上のものを仕上げてくる。例えば、おもてなしもそうですよね。
逆にそれ以上を求めず、量を稼いで一件当たりのコストを下げようという考え方もあるでしょう。

私はできれば日本の働き方の良い面として定性の部分を伸ばしていければと考えています。効率ばかりを追うのではなくて日本の働き方の良い面も伸ばしていけるような方向に進んでいければと思っています。

なるほど。確かにそうですね。生産性自体の定義とか意義というところですね。
この生産性指標を上げることが本質ではないですね。

個人的にはイノベーションを起こせる人材を増やす、活用するといった考え方や個人が活躍できる環境がもっと広がれば嬉しいですね。

イスラエルやアメリカなどはフリーランサーも多く兼業・副業率は高いと言われています。
特にiあるヒトがアイディアを出すことはものすごく価値のあることで、そのアイディアひとつで企業の戦略が変わったりとか、方向性が変わることで生み出す利益が大きく変わることがあります。

しかし、日本の場合はiあるヒトが一社に属しているケースが圧倒的に多いですよね。このままでは日本全体の生産性向上にはつながらないと思っています。
i(アイ)あるヒトが複数の会社で複数のプロジェクトを同時にやっていけるような、仕組み作りが必要ではないでしょうか。

なるほど、それはヒューマンリソースの社会帰属化と言うこともできますね。私も人という資産は会社に属するものではなくて社会に属するものと捉えています。
人は何かに所属していることが必要で、そういう意味でいくとこれからはより会社に属している感覚だけではなく、社会に属している感覚も必要になってくると感じています。
そして、より社会性の高い人間になっていくことがひとつの人物像というか、働く意味にもつながると思っています。

その通りですね。社会性の高い人は今求められている人物像だと思います。
会社のプレゼンスを示す指標が、資本主義的な収益から社会貢献主義的なSDGsのようなものが求められてくると思います。

そういった意味でも生産性については定性評価もしていくべきですね。

「遠隔コミュニケーション」を形容する言葉の変化が働き方の在り方を反映している

人口自体が減ってきている中で労働人口をあげるためにも、一人の人が一社に属するのではなく、複数社に属して複数のプロジェクトに携わっていくことが重要です。
そうするとやはり場所に制限があると、そういう働き方はなかなかできなくなってきます。
そこでテレビ会議・Web会議といったビジュアルコミュニケーションを活用して、日本の生産性があがるような働き方が必要になります。

依頼された作業レベルの仕事をするにしても、依頼先の相手の意図することや熱量や社会への想いといったところを知った上で作業するのとしないのとではアウトプットが違ってきますよね。こういった点でも、熱量や想いを伝えるコミュニケーションは重要です。テレビ会議ver2という感じで、今よりもさらにリアルなコミュニケーションができるといいですね。

そういう意味でいくと、遠隔コミュニケーションは今まさに大きな過渡期に入っているように感じています。
これまでに何度か遠隔コミュニケーションを表す言葉が変化してきました。

今から20年ほど前、ISDN回線を使ってテレビ会議を行っていたころですが、その頃はどういう使い方だったかというとグループとグループの会議で、個人でテレビ会議に参加することはほとんどありませんでした。
様相が変わり始めたのは、IP化されインターネットの時代になってからで、一気に普及が進み始めます。

Web会議はインターネットの時代になって、すぐに使われ始めたのでしょうか。

そのころからWeb会議の普及が始まりました。そこからテレビ会議、Web会議という言葉が並立し始めるのですが、テレビ会議とWeb会議は技術方式が違っていたので、業界側では異なるツールととらえてきましたし、導入する側も違うツールとして認識されていたように思います。
そして更なるIPネットワークの普及が進むと、今度はユニファイドコミュニケーション(UC)という概念がでてきます。IP電話、Web会議、グループウェアなどをPCの中にユニファイド(=統合)するツールがUCです。

わかりやすく言うと、ひとつのメールアドレスみたいなものでメッセージを送る、チャットのようなことができるツールのことですね。携帯電話もUCのひとつと言えます。

そうですね。ただこれも、提供業社側の思いとは裏腹に普及の勢いは途中でトーンダウンしてしまいました。

そして今はコラボレーションの時代です。UCと比較すると、コラボレーションのほうがより多様化されて用いられているような気がしています。ITとしてのコラボレーションという使われ方もあるし、仕事の取り組みとしてのコラボレーションという使われ方もあります。
コラボレーションという言葉が広く用いられ始めたのは、マイクロソフトがOffice365の推進と共に提唱し始めた影響と「働き方改革」を含めた時代の変化が大きいと考えられます。その普及に応じて独立していたテレビ会議・Web会議というものが「コラボレーション」の中に加わるようになってきたのが現在の状態です。

言葉の変化が当時の働き方の在り方を反映しているのですね。非常におもしろいです。
テレビ会議、IP電話、Web会議、コラボレーションと働く文化も変わってきて、個人にどんどん寄ってきていますね。

そうですね、個人に寄っているということを考えると、実は欧米と日本では電話文化のときから大きく違っていました。
欧米企業は個人それぞれに外線番号が割り当てられていましたが、日本企業は部署やチーム単位に一つの外線番号が割り当てられていました。ここがまず違います。これが日本型のコミュニケーションスタイルに現在も影響しています。

GiRAFFE&Co.吉澤氏とVTVジャパン栢野

海外でWeb会議などのシステムがスピーディに普及したのは、個人の内線番号を会議室アカウントに変換することが容易にできたことにあります。個人個人で、バーチャルな会議室を持つ発想です。

日本はテレビ会議の普及はスムーズに進んだのですが、Web会議の普及に時間が掛かっているのは、この企業内の電話文化の影響によるものも一因だと考えられます。コミュニケ―ションツールは、電話のグループ番号と同じく会議室に1台もしくは部署やチームに1台、の発想があったからです。
このアカウントに対する捉え方の違いが個人型コミュニケーションツールの普及に与えた影響は大きいと思います。しかしメールの普及により個人がアカウントを持つようになったこと、そして企業が社員一人ひとりをアカウント管理し始めてきたことで変わってきたように思います。
そういう意味でいくと、ユニファイドコミュニケーション(UC)の浸透がうまくいかなかったのは、そこにも一因があったと考えられます。

そもそも海外とは仕事文化の違いが大きいのですね。だから社会にそれほど、ユニファイドコミュニケーションという言葉や概念が浸透しなかった。それが今、コラボレーションが急速に進んでいるということでしょうか。
1対1のコミュニケーションからコラボレーションになってきて、より個人にフォーカスされるような仕事になってくるということですね。

会議リテラシーが働き方を左右する

今回の新型コロナウィルスでは感染拡大を防止するため、政府の呼びかけもあって、多くの企業がテレワークを実施しています。これは必要に迫られてやらざるを得ないという状況です。
普段からテレビ会議・Web会議システムを使っていたり以前からテレワークを導入していると、スムーズに対応できると思うのですが、普段使っていないところにいきなり実施するとなると、準備や環境不備などのストレスでなかなか円滑に業務を進めることができないと思います。なによりツールがテクノロジーによって簡単に使えるようになったのはいいのですが、利用に関するビジネスマナー的なものがないまま、大勢のビジネスマンが利用するというのも危惧しています。

これはある意味、社会課題と言えます。低品質なコミュニケーションというものが日本中で行われる。それこそ日本全体の生産性低下につながる原因になります。
そうならないためにも最低限知っておくべきマナー、準備しておかなければならないものがあると思います。

仰る通りです。日常的に使用されているからこそのご意見ですね。
会議のファシリテーションという側面でいうと、2つの要素があります。ひとつはヒューマン的な要素。会議での議事進行、アジェンダの用意、議事録のとりまとめなどの会議ファシリテーションが必要なのはリアルな会議と一緒ですね。そもそもファシリテーション能力の低い人が議長になると会議は迷走して生産性は落ちますし(笑)。

先ずはリアルな会議でのファシリテーション技術が、その組織で共通フォーマット化される必要があると思います。そしてテレビ会議・Web会議を使うときはよりシビアなファシリテーションが必要とされます。
もうひとつは使用するシステムに対してのファシリテーション技術です。どういうツールを選択すればいいのか、ネットワークをきちんと管理できているか。個人任せにしているとうまくいかないので、会社が環境を定め整備する必要があります。
ヒューマンに関するところは、リアルであろうがテレビ会議であろうが同じで必要なことですが、テレビ会議・Web会議ではヒューマンとシステムのかけ合わせになってきます。
そこが分からないとITは使いこなせません。
これは当社が発信していきたいところでもあります。コラボレーション文化をつくっていきたいですね。

GiRAFFE&Co.×VTV Japan対談

こちらは2020年2月の対談をもとに作成された記事です。記事内容はすべて取材当時のものとなります。