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テレビ会議のしくみ
テレビ会議のしくみ

第2部 テレビ会議システムのしくみその4.円滑なコミュニケーションを行うための技術2

第2部 テレビ会議システムのしくみ

その4.円滑なコミュニケーションを行うための技術2

*このコンテンツには連載当時(2004年)のままの情報が含まれます。ご注意ください。

曽我蔵くんと市川さん

そう言われて初めて、曽我蔵くんは“映像”のことしか考えていなかった自分に気づいた。
“テレビ会議システムは相手の顔を見ながら会話できるもの”だから、ついついカメラの機能や映り方など、映像を中心に考えていたようだ。

市川さん
「極論になるけど、テレビ会議中にもし映像が途切れても、音声さえ通じていれば会議は成り立つ。しかし、音声が途切れたら会議も中断せざるを得ないよね」
曽我蔵くん
「確かにそうですね。カメラに向かってプラカードを掲げて筆談……ってわけにはいきませんしね」

その様子を思い浮かべながら、それじゃ円滑どころじゃないよな、と曽我蔵くんは思った。

市川さん
「音声がプチプチ切れると、非常にストレスを感じる。たとえ途切れなくても、音が悪いと疲れるんだよ。長時間の会議になればなるほど、音声品質によって疲労度が左右されるんだ」
曽我蔵くん
「それじゃあ、テレビ会議システムでいう良い音声品質とはなんですか?」
市川さん
「それはズバリ、聞き取りやすいことだよ」

エコーキャンセラー

市川さん
「円滑にテレビ会議を行うため、音声を支える技術もいろいろあるんだ。そのうちの1つがエコーキャンセラーだ。曽我蔵くんも聞いたことはあると思うけど、どういうものか説明できるかい?」
曽我蔵くん
「言葉通りに考えると、エコーさせないこと……ですよね」
市川さん
「まあ、その通りだね。
テレビ会議システムの構成の中に、マイクやスピーカーがあることは知っているよね。スピーカーからは相手の声が聴こえ、マイクはこちら側の人の声を取るものだ。
しかし、自分の声が相手に届いた後、相手のスピーカーから出ている自分の音を相手のマイクが拾ってしまい、自分側に送り返されてくることがあるんだ。これをエコーと呼ぶ。
ひどいときには、送り返されて来た音がさらに相手に送り返されて……という悪循環にはいってしまうこともあるんだよ。そのときに起こる、大きく不快な音のことを、ハウリングと呼ぶんだ。」
曽我蔵くん
「エコーやハウリングが起こるのは、なにか原因があるんですか?」
市川さん
「一番大きな原因は、マイクとスピーカーの位置が近すぎて、スピーカーからの音をマイクが拾ってしまうことだ」
曽我蔵くん

「ああ、なるほど。会議室やホールでマイクを使うと、ビーッガーッと嫌な音をたてることがありますね。アレのことですね。

だったら、それを防ぐにはマイクとスピーカーを離せばいいってことですか?」

市川さん
「そうはいっても、マイクとスピーカーの位置を完全に離すことはできないよね。だから、テレビ会議システムに内蔵されたエコーキャンセラーで、エコーを減衰させる処理を行うんだ。自分の声が送り返されたときに、“これは一度聞いたことのある音だ”ということを判断して、音の信号からその情報を削除してしまうんだよ。
具体的には、相手側から送られてきた音声に似せた擬似エコーを発生させて、実際のエコー信号から擬似エコー信号を引き算することでエコー信号を打ち消してしまうんだ。部屋の残響のせいで自分の声が遅れて届いたときなども、同様の処理をしているんだよ。
このアルゴリズムは何種類かあって、その中にはNLMS(学習同定法)アルゴリズムのように発生するエコーと必要な擬似エコーのバランスを自動計算するものもあるんだ」

市川さんは、ミニサイズのホワイトボードに、エコーキャンセラーの仕組み図を描いてくれた。

エコーキャンセラーのしくみ

エコーキャンセラーの仕組み

ノイズキャンセラー

市川さん
「それから、ノイズキャンセラーというものもある。エコーキャンセラーと言葉は似ているけど別の技術だよ。
ノイズキャンセラーは、背景ノイズ(バックグランドノイズ)をカットする技術のことだ。背景ノイズは暗騒音(あんそうおん)ともいうんだけど、知ってたかい?」
曽我蔵くん
「暗騒音ですか? その言葉は初めて聞きました」
市川さん
「機械というのは正直なので、すべての音声を送信してしまうんだ。しかし、実際にテレビ会議を行う場所には、エアコンのファンやさまざまな機械から発生する低周波の背景ノイズが発生している。
会話といっしょにこのノイズも送信してしまうと、人の声がノイズに埋もれて聞き取りにくくなってしまうんだよ。
それに加えて、広範囲の音声を集音しようすると余計に背景ノイズが強調されてしまったり、こもった音になって人の声の明瞭度が低下したりもする。
そこでうまくノイズキャンセラーで背景ノイズをカットして、人の音声がより聞きやすくなるようにしているんだ」

曽我蔵くんは、せっせとメモを取った。

ノイズキャンセラーのしくみ

ノイズキャンセラーの仕組み

オートゲインコントロール

市川さん
「それからオートゲインコントロールというものもある。音声を一定のレベルで送信する技術のことだ」

曽我蔵くんのノートをのぞきこみながら、市川さんは言った。

曽我蔵くん
「ええっと。自動でゲインをコントロールするってことですね。……ゲインってなんですか?」
市川さん
「ゲインというのは、電気回路で行う信号の増幅のことだよ。
たとえば最近のデジカメで暗い場所を撮ると、対象物がそれなりにきちんと写るだろう? 初期のデジカメではこれができなかったんだ。いまのデジカメは、回路で信号を増幅することによって暗い場所でも明るく見えるようにしているんだ。その調節を行う機能をゲインコントロールという。
それと同じように、テレビ会議システムでは音声レベルを調整しているんだよ。
声の大きさは、人によって異なるよね。それに座った席の位置によって、マイクから遠かったり近かったりもする。その距離の違いで、音声の大きさが極端に変わってしまうのを防ぐための技術だ。
テレビ会議システムにおけるオートゲインコントロールを直訳すると、自動音量レベル制御になるかな」
曽我蔵くん
「なるほど。オートゲインコントロールのおかげで、マイクから離れている人の声もはっきり聞こえるんですね」
オートゲインコントロールのしくみ

音声を一定のレベルで送信する機能

円滑なコミュニケーションのための技術2 ~音声に関すること~ まとめ
  • エコーキャンセラー : 送信した音を戻さない
  • ノイズキャンセラー : 背景ノイズ(暗騒音)をカットする
  • オートゲインコントロール : 音声を一定のレベルで送信する
曽我蔵くん
「音声に関する技術もこれだけあるんですね」
市川さん
「最初にも話したけど、テレビ会議で大事なのはいかに聞き取りやすい音声をつくるかなんだ。だから映像だけでなく、音声についてもさまざまな工夫が重ねられている。
ただ、そういった技術によって、本当にテレビ会議システムが使いやすくなるかは別問題だね。周波数帯域を広くするという工夫もされているけど、人間の音声は中低音中心の周波数特性を持っているから、人間が聞きやすい音声に処理できなければ意味がないと思うんだ。
これはボクの意見だけどね」

市川さんの話を聞きながら、いろいろ難しい問題があるんだなと曽我蔵くんは思った。

【ブレイクタイム】テレビ会議システム運用のワンポイントアドバイス
市川さん

教育担当の市川です。

テレビ会議システムのために特別な部屋を作る必要はありませんが、ちょっとした工夫で快適になります。今回は、その秘訣を伝授しましょう。

1)エコー対策
音の反射を抑える環境をつくりましょう。部屋の窓や壁にカーテンがあると、吸音されてエコーが発生しにくくなります。また、マイクとスピーカーを離すことも大切です。その際、マイクやスピーカーの向きにも留意してください。

2)ノイズ対策
不快なノイズが入らない環境をつくりましょう。プロジェクターやノートPCのファンノイズが入らないよう、マイクから離しておきます。資料などの紙をめくる音なども、意外にしっかり拾われますので注意が必要です。また、窓の外やドアの外からの音もなるべく防ぎましょう。

3)オートゲインコントロール
便利な機能ですが、あまり頼り過ぎないようにしましょう。会議室の大きさや参加人数に対して、適切なマイクの数と配置を行ってください。ノイズを切りたいときは、ミュートをうまく使うといいでしょう。

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