その2.テレビ会議システムが注目を浴びる理由
*このコンテンツには連載当時(2004年)のままの情報が含まれます。ご注意ください。
曽我蔵くんが入社して、あっという間に1週間が過ぎた。
新人として覚える必要のあること、やるべき仕事は山のようにあり、時間に追われる毎日が続いていた。そんな中でふと、「テレビ会議システムが注目されているのはなぜだろう」という疑問が浮かんできた。
数ヶ月前まで学生だった曽我蔵くんはテレビ会議システムの存在を知らなかったが、あれからいろいろと調べたところ、いまは曽我蔵くんが想像していた以上にテレビ会議システムが注目されているようだ。
また、新人研修時に営業担当の川崎さんから説明された言葉も思い出された。

テレビ会議システムの導入を検討する企業は、年々増えてきています。
曽我蔵くんは夕方帰社した川崎さんをつかまえて、さっそく疑問を投げかけてみた。
川崎さんの話を総合すると、こういうことのようだ。
- 出張・人件費などが削減できる
- 遠隔地から会議などに出席する際の交通費、宿泊費の削減
- 移動に関する時間的ロスを防げる
- 緊急時に即打合せができる
- 技術革新が進むと同時に低価格化の傾向がある
- 病気や国際事情など、行きにくい地域の拠点や取引先とも打合せができる
- リスクマネジメントの一貫として、企業の経営陣や幹部が一ヶ所に集まることを避けられる

特にグローバル展開を行っている企業は導入率が高いね。たとえばアメリカに出張するコストを考えると、テレビ会議システムの初期コストや運用コストをトータルしても導入した方がいい場合がある。さらに人が動くことを考えると、その精神的負担の軽減など目に見えない部分でのメリットもあるんだよ。

でも、すべての会議をテレビ会議に変更できるわけじゃありませんよね。

その通り。初回の打合せなど、直接会って話した方がいい会議も多いよね。でも3回の出張が1回になるだけでも違うし、ほんの少しでも相手の顔を見て会話することで効果がでる場合も多いよ。

確かに電子メールやFAXだと、自分の意図に反して書いた内容を相手が不愉快に感じてしまうことがあります。
それよりは電話で会話した方が意思が伝わりやすいし、相手の表情が見えるテレビ会議の方がさらに意思疎通しやすいということですね。
でも、本当にコストは安くなるんですか?

じゃあ、ちょっと試算してみようか。身近なところで国内でやってみよう。
川崎さんはそう言ってパソコンに向かい、キーボードを叩きだした。
コストは本当に安くなる? 出張費用 vs テレビ会議システム費用
会議のために札幌、福岡、大阪の3拠点からメンバーを2名ずつ東京に召集した場合を想定します。
- 札幌からの出張費
- 航空運賃(札幌-羽田:JAL普通席 往復割引): 70,120円/名
- 空港から会社への交通費(羽田-浜松町-東京): 637円/名
- 福岡からの出張費
- 航空運賃(福岡-羽田:JAL普通席 往復割引): 75,180円/名
- 空港から会社への交通費(羽田-浜松町-東京): 637円/名
- 大阪からの出張費
- 新幹線料金(新大阪-東京:自由席): 27,240円/名
- 宿泊費: 9,000円/名
- 出張手当: 5,000円/名
*参加者の人件費を加える場合は、参加者の時給と出張にかかる移動時間+現地での就労時間から算出します。
- リース料金
- 東京・大阪にテレビ会議専用機を設置、計200万円のシステムを5年リースで設置
札幌・福岡はPCを利用してWeb会議での参加を想定
- 東京・大阪にテレビ会議専用機を設置、計200万円のシステムを5年リースで設置
37,400円/月
- インターネット利用料金(固定IPアドレスを含む)
- 2拠点にテレビ会議専用の回線を敷設
49,700円/月
- 多地点接続クラウドサービス(ライセンス契約)
- テレビ会議(専用機)2台
契約はテレビ会議専用機10台まで可。他PC、モバイルから参加可能(最大100ユーザー)
- テレビ会議(専用機)2台
約77,000円/月(920,000円/年)
*参加者の人件費を加える場合は、参加者の時給と出張にかかる移動時間+現地での就労時間から算出します。
- Lifesize CloudとLifesize Icon400を想定しています。
- 参加人数の少ない拠点ではWeb会議を利用して、テレビ会議専用機の導入コストを抑えることもできます。
- インターネット利用料は契約するサービスにより異なります。この他に敷設のための初期費用が別途かかります。
- インターネット回線は新たに敷設せずに、既存のものを利用できるケースもあります。

え!? 1回分の出張会議費用より、テレビ会議システムの月額費用の方が安いんですね。

移動には新幹線を利用したり、航空券でも各種割引を使う企業が多いだろうし、拠点数やメンバー数などの条件によって異なるけどね。
それによく聞くのが、せっかく導入しても利用しなくなってしまうということ。テレビ会議システムはお互いの表情が見えるのが利点だけれど、モニター越しに相手を見るものだし、やはり直接集まる会議の臨場感には適わない。だからこそお客様には、検討段階から『何のためにテレビ会議システムを導入するのか』十分理解してもらわなければならないんだ。

使用目的がはっきりしないまま便利そうだからという理由で導入しても、使われなくなってしまうということですね。
曽我蔵くんはうなづき、ノートに「使用目的を明確にしてもらうこと」と書き込んだ。それからふと思いつき、テレビ会議システムの用途をまとめてみる。
テレビ会議システムは何に使えるか?
コミュニケーション | |
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a.役員会議など ・多忙な役員の時間的ロスを避ける ・緊急時にすぐ会議が招集できる ・リスクマネジメントの一貫として b.プロジェクト会議・営業会議など ・日常的なミーティング(気軽に会議を招集できる) ・緊急時にすぐ会議が招集できる |
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遠隔教育 | |
・講義会場から離れた場所からリアルタイムで受講する (「いつでも」「どこでも」「誰でも」講義を受講できる) ・英会話などコミュニケーションが必要な教育に利用する |
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遠隔医療 | |
・へき地医療に従事する医師が中央からの支援や相談に活用する ・手術風景の傍聴など医療教育を行う ・在宅医療の支援などで利用する ・災害地などの医療活動に使用する(衛星通信での利用が中心) |
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モニタリング | |
・工場、店舗などの監視用システムとして活用する | ![]() |
思いつくままノートに列挙しているうちに、家庭でテレビ会議を使って英会話を習うというCMを見たことを思い出した。
海外の大学へ留学した曽我蔵くんだったが、もし母校がその英会話学校のような遠隔授業を開催するような時代がきたら、日本で働きながら学問を続けるなんてことができるのかもしれないな、と考えた。
営業担当の川崎です。
曽我蔵くんがまとめた「テレビ会議システムの用途」の中に、「役員会議」がありました。読者の中には「それなら取締役会にも使えるんじゃないか?」と考えた人がいらっしゃるかもしれません。自分がそうだよ、と手を挙げたアナタ!感服します。
この件について、私が簡単に補足しましょう。
取締役会は、定款に特別の定めを行わない限り「取締役の過半数が出席し、出席取締役の過半数で決議される」と定められています。書面や代理人による決議は認められていません。しかし、電話会議システム及びテレビ会議システムによる参加を認めるという見解が、すでに法務省から出ています。
ただしそれには、議事録に「テレビ会議システムを使った取締役会で、問題なく意見交換を行い審議ができた」と記述しておくことと、システムとして次の要件を満たしておく必要があります。
その要件とは、「出席者の音声が即座に他の出席者に伝わり、出席者が一堂に会するのと同等に、適時的確な意見表明が互いにできる状態になっていること」(つまり通常の取締役会と同様に「一堂に会して」「討議を尽くした」と評価できる状態になること)です。最近テレビ会議システムの性能が格段に進歩したこともあり、特に難しいことではなくなりました。
また法務省は、システム構成や機器のスペックについては定めていません。前述の要件に基づいて、各企業が自主的に判断していいのです。
電話会議システム及びテレビ会議システムによる取締役会の開催は、商法にはまだ明記されていません。アメリカではビジネス法に明文化している州もありますので、日本でもそのうち明記されるかもしれませんね。
参考:
法務省民商3045号平成14年12月18日「電話会議の方法による取締役会の議事録を添付した登記の申請について」