その4.テレビ会議システムの種類
*このコンテンツには連載当時(2004年)のままの情報が含まれます。ご注意ください。
今日の曽我蔵くんは、会社が主催するテレビ会議システムのセミナー会場にいた。
このセミナーは、テレビ会議システムに興味を抱くお客様を招待して行われるもので、テレビ会議システムについて解説する他 に、海外と接続してデモが行われる。セミナー会場の隣にはショールームが用意され、お客様に直接触れていただいた上で、質問や相談を受けようという主旨が あった。
ショールームにずらりと並んだ各メーカーのシステムを眺めて、曽我蔵くんは感嘆の声をあげる。

同じくショールームにいた市川さんが、曽我蔵くんの声を聞いて顔をあげる。
内心「きたきたきた!」と思った曽我蔵くんの予感は的中した。


曽我蔵くんはごくりと唾を飲み込んで、ショールームの中央にあるシステムに近づいた。2台並んだモニターの上にカメラが置かれ、コーデック本体がラックに納められている。

曽我蔵くんは研修で学んだ内容を必死に思い出しながら、つっかえつっかえ説明をはじめた。
専用機 ルームタイプ
対応人数 | 5~25人(それ以上は周辺機器にて拡張) | |
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特 徴 | ・複数対複数の接続に効果がある。(大型会議室やエグゼクティブ用会議室向け)
・カメラとコーデックが分かれている。 ・テレビやプロジェクターなどの映像機器に接続して使用する。 ・システム付属のマイクもあるが、外部機器との接続も可能。 ・高品質な画像や音声を提供し、ハイスピードまで対応。 ・パソコンの知識がなくてもリモコンで簡単に操作できる。 ・安定性が高い。 ・AVの拡張性が高い(設計に合わせて他の周辺機器との連携が取りやすいよう入出力端子が豊富な機種が揃っている)。 ・デュアルモニターで使用されることが多い。 ・コンパクトタイプやパソコンを利用するソフトウェアベースよりも高価。 ・機種やメーカーが異なっても互換性が高い |
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必要となる機器 | ・専用端末(4~6拠点であればMCU内蔵タイプあり)
・モニター |

デュアルモニターについて補足しておくと、これは2台のモニターを並べて使用するもの。デュオビデオと呼んでいるメーカーもあるね。一方のモニターの画面を分割表示して接続先の各拠点の映像を映し、もう一方のモニターにはパソコンや資料カメラのデータを映して会議を進めるのに使われることが多い。一方に接続先、もう一方にこちら側の映像を映して使うこともあるよ。

「じゃあ、次はこれ」と市川さんが指差したのは、コンパクトタイプだった。20台もの数量をひとりで検品したおかげで、曽我蔵くんには非常に身近に感じられるシステムだ。これだけは胸を張って説明できる。
専用機 コンパクトタイプ(セットトップタイプ)
対応人数 | 3~10人(システムによる) | |
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特 徴 | ・複数対複数の接続に効果がある。(小規模から中規模の会議向け)
・カメラとコーデックが一体型。 ・テレビやプロジェクターなどのモニターに接続して使用する。 ・システム付属のマイクもあるが、外部機器との接続も可能。 ・IP/768kbpsのタイプが多い。 ・パソコンの知識がなくてもリモコンで簡単に操作できる。 ・テレビの上にのせて使用できるため場所を取らない。 ・設置や移動など取り扱いが簡単。 ・端子の数が限定されるためAVの拡張性はあまり高くない。 ・ルームタイプよりは安価だが、パソコンを利用するソフトウェアベースよりは高価。 ・もっとも利用ユーザーが多いタイプ。 ・機種やメーカーが異なっても互換性が高い |
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必要となる機器 | ・専用端末(4~6拠点であればMCU内蔵タイプあり)
・モニター |

専用機 オールインワンタイプ
対応人数 | 1~3人 | |
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特 徴 | ・少人数での打ち合わせ
・カメラ、スピーカー、コーデック、モニターが一体型 ・パソコンの知識がなくてもリモコンで簡単に操作できる ・場所を取らない ・設置や移動など取り扱いが簡単 ・拡張性が低い(外部機器がつながらないことが多い) ・安価 ・機種やメーカーが異なっても互換性が高い |
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必要となる機器 | ・専用端末(4~6拠点であればMCU内蔵タイプあり) ※パソコンの画面を相手方に表示する場合はパソコンや資料カメラ、多くの拠点を接続するにはMCUが別途必要 |

曽我蔵くんは、ショールームの隅に設置されたパソコンを振り返った。そのパソコンにはモニターとキーボード、マウスの他に、スピーカーとマイク付きのヘッドセット、カメラが接続されている。

曽我蔵くんは、ソフトウェアベースがどういうものだか分かってる?

先日調べた内容を思い出しながら答える曽我蔵くんに、市川さんはソフトウェアベースの性能と特徴を詳しく説明してくれた。
ソフトウェアベース(Web会議)
対応人数 | 1~3人 | |
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特 徴 | ・基本的に個人対個人の接続に向いている
・パソコンに専用ソフトウェアをインストールするか、ブラウザを利用する ・画像や音声をソフトウェアで圧縮処理する ・パソコンのモニターを使用する ・カメラ、マイク、スピーカーを外部接続する ・専用端末に比べると、画質や音声の品質が劣る ・専用端末よりコストが安い ・パソコンの持つ機能との連携に優れている ・パソコンの知識が必要 ・パソコンのCPUパワーに依存する ・安定性はOSの安定性に依存する ・互換性が低い(同じシステムでないとつながらないことがある) |
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必要となる機器 | ・パソコン
・モニター ・カメラ ・スピーカー ・マイク ・管理サーバー(MCU機能・管理機能含む) *クラウドサービスの場合はライセンス契約などが必要 |

恐る恐る切り出した曽我蔵くんの言葉に、意外にも市川さんは深く頷いた。

そのためにも、お客様自身にテレビ会議システムでどのようなコミュニケーションを図りたいのか理解してもらわなくてはならないんだ。どんなに性能のいいものを導入したって使用されなかったら意味がないから、社内にテレビ会議の文化を根付かせてもらう必要もある。活用されなかった場合には、かえってマイナスのイメージとなって残ってしまうことだってあるからね。
だからこそ我々がきちんとアドバイスした上で、お客様に納得してもらい、導入を決めてもらうんだ。今日のセミナーだってその意味もあるんだから、曽我蔵くんもちゃんと理解しておいてくれよ。
珍しく真顔で力説する市川さんに、曽我蔵くんは大慌てで「はいっ」と返事をしたのだった。
すでにおなじみとなった(ですよね?)、教育担当の市川です。
音声会議システムは、音声会議端末をネットワーク回線に接続して、遠隔地と音声のみで会議を行うものです。日本ではあまりなじみがありませんが、世界市場ではテレカンファレンス(音声会議・テレビ会議・ウェブ会議)全体の75%から80%を占めています。今後もさらに拡大するだろうと予想されています。
音声会議システムは、テレビや映画でおなじみ「チャーリーズエンジェルズ」での指令通達シーンをイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。
1対1だけでなく、複数拠点の接続も可能です。このあたりはテレビ会議システムと同様ですね。