大久保先生に聞くテレビ会議教室
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8.テレビ会議に関わる人間要因(ヒューマン・ファクタ)【映像1】
システムが安全かつ効率よく目的を達成するために、考慮しなければならない人間側の要因をヒューマン・ファクタといいます。今回からはテレビ会議システムに関わるヒューマン・ファクタについて、数回に渡ってお伺いします。
テレビ会議システムに関するヒューマン・ファクタの研究は、どのように始まったのでしょうか。
大久保先生 |
もともとはテレビ会議システムの開発研究者たちが、“テレビ会議をいかに使いやすくするか。そのためにどのように製品デザインを行うか”というところからスタートしていると思います。 しかし最近では、テレビ会議に関するヒューマン・ファクタの研究も徐々に一般化してきて、たとえば大学の研究機関などで研究が行われるようになりました。このような研究機関では、別に研究の成果をシステムに生かそうなどと考えているわけではなくて、社会心理学的な興味から手がけているんだと思います。もちろん、メーカーなどから依頼されることもあると思います。 |
テレビ会議の製品開発には、ヒューマン・ファクタが生かされているのですか。
大久保先生 |
テレビ会議のヒューマン・ファクタは、大きく3つに分けられます。 まずは映像に関する「視線の一致」についてお話しします。これは、日本電気の佐藤さん達が実験していたものです。 テレビ電話は相手を見ながら話をします。 ベル研究所は、米国最大の電話会社であるAT&Tが設立した研究機関です。1996年にAT&Tの通信機器、半導体製造部門が分離独立してルーセント・テクノロジーとなり、現在はルーセント・テクノロジーに属しています。センターオブエクセレンス(centre of excellence)で、ノーベル賞受賞者も何人か輩出しているという非常に権威のある機関です。
視線の一致を実現させるために考案されたのがハーフミラーで、図1の上部の仕組みがそれにあたります。カメラの軸線上に45度の角度でハーフミラーを置いて、映像を下からハーフミラーに透過すれば、相手画像を見る視線と自分を撮影するカメラに見られる視線を一致させる事ができます。図2の右上の写真が、視線が一致している状態ですね。 ハーフミラーを使わない通常のシステムが、図1の下部の仕組みです。カメラはシステムのどこかに置かなければならないのですが、どこに置いたとしても相手の映像を見ようとすると、自分を映すカメラと視線がずれてしまい、視線の不一致が生じるわけです。これは避けられません。 ハーフミラーは非常に古くから知られている技術で、日本にも1937年にハーフミラーを使った視線一致型のテレビ電話がありました。 ではなぜハーフミラーがシステムの主流にならなかったかというと、いくつかの問題があったからです。それが下記の3つです。
1番目については、1970年代にはディスプレイがCRTしかなく、カメラも撮像管だったという理由があります。だからどうしても装置が大柄になってしまいます。 ただし、現在はディスプレイも平面型になりましたし、カメラの方もCCDになりました。そういう技術やコンポーネントが進歩したことを考えると、もう一度ハーフミラーのシステムに挑戦してもいいかもしれません。
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視線の一致と言うのは、テレビ電話の開発が行われた初期からのテーマだったのでしょうか。
大久保先生 |
そうです。 これは余談ですが、このハーフミラーの仕組みは、テレビのニュース番組でも使われています。キャスターがニュースを読むときに、目の前のディスプレイに表示される原稿を読むんですけれども、そうすると視聴者の方に向かって話しているように見えるんです。キャスターの瞳をよーく見ると、原稿が写っているからもしれませんね。そういうところにも使われています。 また面白い話もあって、これはイギリスのBT(British Telecom)の人が報告しているんですが、通常のシステムに慣れてしまうと、真正面から見つめられた場合にかえって奇妙に見えるというのです。 また、カメラの位置がどこかにあるかによって、印象が大きく変わります。
@の映像は、カメラを真正面に置いた場合で、ハーフミラーを使ったシステムもこのように見えます。 Aは少し伏目がちながら、自然に見えますよね。Bは同じ9度という角度ながら、「なぜ上を見ているの?」とひどく不自然に感じます。Cはそっぽを向いたような印象も受けます。 図6は、日本電気の佐藤さん、三浦さん、永田さんが最初に発表した「映像電話における撮像管の位置に関する検討」のレポートです。1968年4月のものです。
検知限・許容限というのは、すでに確立されている視感評価実験の1つの指標です。平均評点で検知限界は4.5、許容限界は3.5です。 検知限界4.5というのは視差2度に値します。検知限であろうとするとハーフミラーのような仕組みが必要です。 佐藤さん達の実験はテレビ電話のためのもので、テレビ会議も最初はこれを参考に設計していましたが、ディスプレイのサイズがどんどん大きくなるにつれて、徐々にそういうことに構っていられなくなっているようです。会議室全体に映すような大きなシステムでは、9度は優に超えているはずですが、大人数だとひとりずつが小さいので、あまり気にならないのかもしれません。 |
テレビ電話とテレビ会議の検知限界・許容限界は異なるのでしょうか。
大久保先生 |
1970年代にテレビ会議で実験を行った方がいらっしゃいますが、結果はそれほど違わなかったようです。なので、佐藤さん達の行った実験結果がガイドラインになると思います。 これも余談になりますが、第3世代携帯と呼ばれているFOMAにもテレビ電話機能がありますね。カメラをどこに設置しているのか興味があったので調べたところ、右下に置いてある機種もありました。 |
視線一致の問題を解決し、かつ普及するような形での製品化はできていないんでしょうか。
大久保先生 |
視線を一致させた製品があるかという意味では、まだ未解決です。 |
※本文中に掲載された図表のうち出典記載のないものは、大久保先生の講義資料を元に作成したものです。 |
――次回は引き続き、「テレビ会議に関わる人間要因(ヒューマン・ファクタ)【映像2】」を掲載します。 |













