9.ネットワーク環境の変遷
テレビ会議システムで使用されるネットワークは、「専用線」から「ISDN」へ、さらに「IPネットワーク」と変化を遂げた。
その変遷について、下記にまとめた。
※ 連載期間:2004年11月 ~ 2006年10月 *一部情報が連載当時のままのものがございます。ご了承ください。
テレビ会議システムで使用するネットワークの変遷
- テレビ会議システムで使用するネットワークの変遷は、H.320やH.323などが標準として成立したことによって生じた。
- H.320・H.323とはITU-Tという世界標準を定める団体に承認・勧告されたプロトコル。
- ネットワーク上で音声や動画を送受信するために、音声・映像方式・データ圧縮伸長方式などを定めた。
年代 | 主流ネットワークとその特徴 | 変遷の理由 |
---|---|---|
1980年代以前 | 専用線 |
- |
1990年以降 | ISDN |
ISDNのマルチメディア通信システムを規定するH.320の成立による(1990年) |
2000年以降 | IP(Internet Protocol) |
IPネットワーク上のマルチメディア通信を規定するH.323が成立(1996年) |
ISDN回線について
日本では、2002年頃からネットワークの主流がISDNからIPへ移行した。
しかし海外では、まだまだISDN環境を利用している国が多い。(韓国のように、政府がネットワークのIP化を後押ししている国もある)
ISDNの種類
- ISDN回線には、インターフェースによってBRIとPRIがある。
- 日本(NTT)におけるBRIとPRIの例
- BRI : NTTの家庭や中小企業向けの「INS64(INSネット64)」
- PRI : 光ファイバーを利用した大企業向けの「INS1500(INSネット1500)」
Gateway装置の役割
- テレビ会議システムでは、基本的に相手がISDN環境の場合にはISDNで、IPネットワーク環境の場合にはIPで接続する必要がある。
- 一方がISDN環境でもう一方がIP環境という場合には、(H.320やH.323という国際標準規格に準拠しているシステムであれば)GateWay装置を使えば接続できる。
- ISDNからIPの移行期でもある現在は、GateWayの果たす役割が重要。
- 既にFOMAなどの3G携帯とH.323のGateWay装置も製品化されている。(外出先あるいは出張先から、3G携帯を使ってテレビ会議に参加できるようになる)
- 機種や規格が違うから会議に参加できない、というようなことが今後なくなっていくと予想される。
ISDNの特徴
- ISDNは回線品質が保証されているネットワーク。
- インターネットのようにベストエフォードではなく、NTTの『INS1500』なら1.5Mbpsが必ず確保される。(映像や音声が安定する)
- 従量課金のため、接続時間に応じて費用がかかる。
IPネットワークについて
一口にIPネットワークと言ってもいくつかの種類があり、品質保証もコストによって異なる。(回線品質が保証されているサービスもある)
インターネットはコストは低いが、ベストエフォード型で品質は保証されない。
IPネットワークの種類(※詳細は次セクションにて)
- IPネットワークにもいくつかの種類がある。(下記はその一例)
- IP-VPN : 通信事業者の保有する閉域IP通信網を介して構築された仮想私設通信網(VPN)のこと。
- 広域LAN : 同一収容局内エリアをLANで接続できるサービスのこと。
- インターネット : ブロードバンド化と低価格化が進んでいるが、品質保証が一切ない。
- 品質保証もコストによって異なる。
インターネットの特長
- 低コストかつ通常は月額固定であり、コスト管理もしやすい。
- ベストエフォード型で品質は一切保証されていない。(映像や音声が安定しない)
IPネットワークに主流が移行した理由
- ブロードバンドの普及で、IPの回線品質が格段に向上した。
- 接続時間に関係なく定額コストである。