第2部テレビ会議システムの納品・設置編
その2.テレビ会議システムの設置
*このコンテンツには連載当時(2007~2009年)のままの情報が含まれます。ご注意ください。
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お客様へ納品したシステムの設置日がきた。
約束の時間通りにお客様のオフィスを訪問した曽我蔵(そがくら)くんは、テレビ会議システムを設置する会議室に案内された。
設置当日にも予想外のトラブルは起こる
お客様
「以前にも説明しましたが、この会議室に設置したいんですよ」
曽我蔵くん
「はい。それでは設置場所などを確認させていただきますね」
曽我蔵(そがくら)くんはファイルを取り出した。ファイルから取り出したペーパーには、事前にお客様へヒアリングした項目が、会議室のレイアウト図とともにまとめられている。曽我蔵(そがくら)くんはお客様とともに、ひとつひとつの項目についてその場で現状と照らし合わせた。
事前確認内容
- テレビ会議システムの設置場所
- 設置場所の電源の有無、数、電源の場所
- ネットワーク(IP or ISDN)の有無の確認
*ネットワークの手配はお客様に準備していただく。紹介も可能
・IPの場合:設置場所のテレビ会議用LAN回線の有無、LANコネクタ(LANの口)の場所も確認 - テレビモニター、プロジェクター、スピーカーなどの映像・音声アウトプット機器の有無
- テレビモニター、端末の設置位置
お客様
「はい。その内容で間違いはありません」
曽我蔵くん
「分かりました。ではこれから、予定通りの場所に設置していきます」
曽我蔵(そがくら)くんはお客様にそう伝えると、設置作業を開始した。モニターラックを組み立てたり、端末を設置したり、システムを設定するなど、作業はスムーズに進んだ。
曽我蔵くん
「設置はひと通り済みましたので、これから接続テストを行います。当社のオフィスと実際に接続してみますね」
曽我蔵(そがくら)くんは、テレビ会議システムの端末を起動し、モニターの電源を入れた。モニターにカメラがとらえた曽我蔵(そがくら)くんとお客様の姿が映る。
お客様
「あれ? へんだな」
曽我蔵くん
「……どうしましたか?」
お客様
「いえね。思っていたより人の顔が暗く見えるなと思って。暗くありませんか?」
曽我蔵くん
「ああ、それは逆光のせいです」
お客様
「逆光?」
曽我蔵くん
「ええ。写真を撮るときにもあるように、窓とカメラ位置の関係でこの場所では逆光になるんです。そのため周囲が明るくなって、人の顔が暗く映ってしまうんですよ」

会議室のレイアウト(変更前)
お客様
「なるほどね。……うーん。これを改善する方法はないのかな?」
曽我蔵くん
「簡単に言うと、周囲が暗くなれば人の顔は明るくなります。テレビ会議を行う際には窓のブラインドを下ろすようにするか……いっそのことカメラとモニターの設置位置を変更してしまうのも手ですね」
お客様
「ああ、設置位置を変える方がいいかもしれませんね。
さっき曽我蔵(そがくら)さんが設置しているのを見ながら、これでは参加者全員が映らないから会議テーブルの位置を変更した方がいいんじゃないかと考えていたんです」
曽我蔵(そがくら)くんは会議室内にあったホワイトボードを借り、お客様と新しいレイアウトを相談した。そうして決定したレイアウトにそって、曽我蔵(そがくら)くんは設置をやり直す。

会議室のレイアウト(変更案)
曽我蔵くん
「あ。しまった!」
お客様
「え。まだ何か問題がありますか?」
曽我蔵くん
「いえ。ケーブルの長さがギリギリなんです」
お客様
「え。ってことは、元に戻さないとダメなのかい?」
曽我蔵くん
「いいえ、そんなことはありません」
曽我蔵(そがくら)くんは急いで否定した。
曽我蔵くん
「ただ、いまのままだとケーブルに余裕がなくて、システムを少し横に動かしたいというときに移動ができないんです。延長ケーブルがあれば大丈夫なんですが、生憎、今日は持参していないんです。申し訳ありませんが、後日配送させていただくのでご容赦いただけませんか」
お客様
「急にレイアウトを変更したから仕方がありませんね。忘れずに送ってくださいよ」
曽我蔵くん
「はい。すぐに手配します」
その後、接続テストを終えた曽我蔵(そがくら)くんは、お客様へ操作トレーニングを行った。お客様からさらにテレビ会議についての質問など受け、要確認事項は宿題として帰路に着いた。
事前のヒアリングが重要。当日は最善の対策を
帰社後、曽我蔵(そがくら)くんは報告のために、すぐさま川崎さんを訪れた。
川崎さん
「曽我蔵(そがくら)くん、ご苦労様。設置は無事に済んだかい?」
曽我蔵くん
「ひとまず完了しましたが、設置場所を予定の場所から変更しなければなりませんでした」
曽我蔵(そがくら)くんは、今日の出来事を川崎さんに報告した。

曽我蔵くん
「…………というわけなんです」
川崎さん
「なるほどね。確かに、設置当日に予想もしなかったことが起こることはよくあるね。
今日、曽我蔵(そがくら)くんが体験したように設置場所が変更になったり、お客様から急なお願いを受けることもある。そのほかにも、設置前に会議室を確認できないまま当日行ってみると、壁が真っ白でホワイトバランスがうまくいかないなんてこともあるね。テレビ会議が苦手とする細かいストライプ柄の壁紙だったってこともあるけれど、そういう細かいことまではお客様はご存じないから、意外な落とし穴になったりするんだ。また、最悪の場合には、事前ヒアリングの内容と現状がまったく違っていたなんてこともある。
私の経験だと、プロジェクターを机に置いて使用すると聞いていたはずが、実際には天吊設置になっていて、ケーブルの長さも足りなければ、会議テーブルとシステムのカメラ位置も予定通りにはいかなくて、対処するのに非常に困ったことがあったよ」
今日、曽我蔵(そがくら)くんが体験したように設置場所が変更になったり、お客様から急なお願いを受けることもある。そのほかにも、設置前に会議室を確認できないまま当日行ってみると、壁が真っ白でホワイトバランスがうまくいかないなんてこともあるね。テレビ会議が苦手とする細かいストライプ柄の壁紙だったってこともあるけれど、そういう細かいことまではお客様はご存じないから、意外な落とし穴になったりするんだ。また、最悪の場合には、事前ヒアリングの内容と現状がまったく違っていたなんてこともある。
私の経験だと、プロジェクターを机に置いて使用すると聞いていたはずが、実際には天吊設置になっていて、ケーブルの長さも足りなければ、会議テーブルとシステムのカメラ位置も予定通りにはいかなくて、対処するのに非常に困ったことがあったよ」
曽我蔵くん
「川崎さんでもそんなことがあるんですか。そういう場合には、どう対応するのがいいんですか?」
川崎さん
「臨機応変に対応するしかないけれど、必要があれば日を改めて作業する決断も必要かな。でも、今日の曽我蔵(そがくら)くんの対応は正解だと思うよ。ケーブルは忘れずに配送しておいてね」
曽我蔵くん
「はい。それにしても、逆光になるのは予想外でした」
川崎さん
「窓のカーテンやブランドなど、自然光を調節するものや揺れ動くものにも注意が必要なんだ。今回はレイアウトを変えることで対応できたけれど、どうしてもその場所以外に移せないこともあるからね」
曽我蔵くん
「その時にカーテンもブラインドもなければ、どうにもなりませんね」
川崎さん
「そうだね。その点についても、事前にきちんとヒアリングしてプロとして的確にアドバイスをすることが必要だね。状況によっては、お客様にご迷惑をかけてしまうことになるからね」
曽我蔵くん
「はい。分かりました」
曽我蔵(そがくら)くんは今回の問題点を脳裏に刻んだ。
今回の問題点
- 設置ではヒアリングを行っていても、何が起こるかわからない。
- 会議室の設計など、予想できない環境もある。
- トラブルを避けるために、事前のヒアリングが大事!(「その1.納品編」を参照)