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第3回「テレビ会議の将来」
早稲田大学 国際情報通信研究センター 大久保 榮 氏1/2

経費削減の切り札としての側面ばかりを語られがちなテレビ会議ですが、コミュニケーションツールとしての本当の役割にも目が向けられ始めています。今回は 弊社顧問をお願いしている早稲田大学客員教授の大久保榮先生に、テレビ会議が果たす本当の役割と標準化の動向までお話を伺いしました。今後のテレビ会議技 術の方向性についても触れていただきました。

大久保榮氏mark01ゲストプロフィール

早稲田大学 国際情報通信研究センター 招聘研究員(2012年3月 退職)
VTV ジャパン株式会社 技術戦略アドバイザー
博士(工学)、IEEE Fellow 大久保 榮 (おおくぼさかえ)

1964 年、広島大学工学部卒業。同年日本電信電話公社(現 NTT )に入社。以来、研究所で主にテレビ電話、テレビ会議システムとその人間要因、広帯域通信網、映像符号化の研究開発に従事。
1994 年(株)アスキーに入社、(株)グラフィックス・コミュニケーション・ラボラトリーズに出向し研究管理と標準化に従事。 1998年、通信・放送機構に移り2001 年まで招へい研究員として早稲田リサーチセンターでマルチメディアシステムの研究に従事。 1999 年 9月より早稲田大学国際情報通信研究センター客員教授、2011年4月より招聘研究員として2012年3月まで教育、研究に従事。 2006年、 VTVジャパン株式会社顧問に就任。


1984 年以来映像符号化とオーディオビジュアル通信システムの国際標準化に携わり、H.261 、H.320や H.262/MPEG-2ビデオ、H.323の標準化に貢献した。 2002年から2008年の間ITU-T SG16 WP2/16議長を務めた。


mark02こちらもご覧ください。テレビ会議教室

テレビ会議は人間にとって本質的なツールだと思います
大久保先生
私たちはテレビ会議システムをビジネスの素材にしていますが、私自身、長年の活動の中で、テレビ会議は人間の知的活動に本質的な役割を果たしていると理解しています。 PC というのは今や大変強力なツールですが、実は単体ではたいしたことはできない。 90 年代に入ってインターネットにつながり、コミュニケーション手段を獲得、ネットワーク化されたことでより強力になったのだと思います。この点はヒトが君臨するに至ったのとよく似ています。 最近は脳科学の分野で盛んに議論されているようですが、知性というのは一人で培っているのではなく人とつながることで産み出されていると、そしてそれが人間を発展させてきたとされています。日常やビジネスの中でも一人でできることは限られていて、チームで行動することで初めて強い力が出せる。反対にミスコミュニケーションは失敗につながるのです。コミュニケーションというのは人にとって本質的な役割を果たしており、テレビ会議はそれに貢献している訳で、人間にとっては本質的なツールだと思います。
書いた記録に残されただけでも人類 5000 年の歴史の中で人はどうやってコミュニケーションをとってきたかというと、人と会って話しをすることがベースだった訳で、テレビ会議はそれを支援し、一部は代替するツールとして将来性は高いといつも思います。
栢野
私はテレビ会議の役割は、知的活動の中でも創造性の部分かなと思います。 PC に一人で向かって考えていても限界があるが、人と話すことでどんどん創造性が広がっていく。知的生産の場を物理的な距離に関わらず作れるのが、テレビ会議の利点だと思います。 この部分については、お客様へ説明してもなかなかイメージしてもらえることが少なかったのですが、最近は理解を示してもらえる機会が増えてきたように感じます。 テレビ会議が創造性を刺激する媒体であることが理解され、以前よりもテレビ会議の役割が増えてきたことは嬉しい限りです。
大久保先生
大久保先生では、どうしてテレビ会議はなかなか広まらないのかと(笑)。
FAX とよく比較されますが、 FAX は郵便の代わりとして普及していますが、テレビ会議は対面することに取って代って普及、とはなかなかいかない。勿論、これから普及するのだとずっと思っておりますが。
人と人とが会って話をするという行動の歴史は長く、それこそ 5000 年前から行っているコミュニケーション手段な訳ですから、人が変わらなければこれはなかなか変わらないのかと思います。
ただ、最近のグリーン志向で環境の劣化を防ぐ視点からもテレビ会議は注目されていますので、これから徐々に受け入れられていくのではないでしょうか。
では、技術的にはテレビ会議は FAX のように成熟の域に達しているのかという点ですが、映像・音声・ PC プレゼンテーションの技術はほぼ成熟したといえるでしょう。しかし、それ以降の技術は現在手探り状態です。テレビ会議をしながらファイルを共有したいと 思ったら、 e-Mail でデータを送ったり、 Web ページに各々でアクセスして確認したりと、テレビ会議とは別のものを組み合わせて会議を進めています。会議室に入ればやりたいことが全部できる、例えるな ら“ワンストップショッピング”のような技術が、今後は出てくればいいのではないでしょうか。また、会議を計画したときに確実につながることを支援する仕 組みも重要視されてくるでしょう。
栢野
栢野正典確かに先生が仰る通り、歴史というものはすぐには変わらないというのは感じますね。単なる個人の習慣ではなくて、人類の歩んできた歴史の中で離れた人と話 ができるというのは、ここ数十年のことです。これは歴史の中では非常にインパクトのあることだったでしょうし、単に便利だからということだけでは普及はで きないものがあると思います。 FAX とは違い、テレビ会議は人間のデリケートな部分まで踏み込んでいるツールといえますから、急激に置き換わることはできないでしょうね。便利になっていくこ とは必要だとは思いますが、まだ時間が必要なのかもしれない。テレビ会議の技術の発展も必要ですが、それとは違う方面からの取り組みも普及には必要なん じゃないでしょうか。
大久保先生
私はソフトボールをやっていますが、そこでも各ポジションがしっかり仕事をすれば勝てるわけでもない。各人が特別うまくなくても、みんなの気持ちが一つに なったら弱いチームでも勝てることがあるのですね。どのグループでもそうだと思うのですが、最近は個人の仕事が非常に専門的になってきています。それらを つなぎ合わせるために、テレビ会議はお互いのコミュニケーションの場を提供できる、重要で可能性の高い領域だといつも思います。
相手がそこにいると感じるには、遅延を無くすこととリップシンクは特に重要
大久保先生
先程、テレビ会議の技術は成熟してきたというお話をしましたが、品質的には十分かというとマルチポイントのシステムはまだまだです。MCU(*1)を使って画面分割表示にすると解像度も低いし、遅延も多い。技術的にも改善の余地はあります。 私は相手がそこにいると感じるには、遅延を無くすこととリップシンクは特に重要だと思います。その点、遅延をなくすことに注力して開発された Vidyo はおもしろいですね。 Vidyo は処理能力を端末側に移したという点で反論を受けることもあるのですが、マルチポイント時の遅延を無くそうとした努力は一石を投じたといえます。
栢野
映像品質の基準は個人の感覚によるのでなんとも言えないところですが、 HD のテレビ会議に慣れた状態から、SD のテレビ会議を使用すると、やはり最初は違和感があります。 その違和感も会議を続けているうちに慣れてくるのが、人間の目の面白いところですね。一度地デジになれるとアナログ放送に戻れないような感じでしょうか。
遅延も気になる時はあります。会議中にぐっと話しに入り込んで相手と言葉の頭がかぶったりすると、ああ、これはテレビ会議だったと冷静になったりします。やはりマルチポイントで会議を行っている時は多いですね。
Vidyo の話が出ましたが、標準化されていないシステムが登場することで、ユーザー側に混乱が出てくるのではないかと気になっています。 Web 会議と専用機は通信の上では全く違う技術で、つながらないのは当たり前なのですが、使用目的は同じですからユーザー側では何故つながらないのか理解しづらい。これから普及していくにしたがって、そこが課題になってくると思います。
大久保先生
確かに先程出た Vidyo は遅延を無くすために H.264/SVC(*2) と MCU に代わるパケットスイッチという新しい方式を採用していますが、じゃあ、今までの標準に対応したシステムはどうしてくれるのだという反論もあります。とり あえず、ゲートウェイを使うと接続できるのですが。これは使う人がどれだけ受け入れるかによるのですが、私は Vidyo の勇気は称えたいと思いますね。
栢野
Vidyo は、 H.323 ではどうにも解決できない遅延の問題を崩したという点での功績は大きいと思います。今後標準化でもこの技術が取り込まれて技術的な発展があればいいなと期待するところです。
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