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第2回「テレビ会議の本質は創造性の開拓」日大商学部 児玉 充氏 2/4

新しい技術を浸透させるには、トップダウンとボトムアップの両アプローチが必要です。
児玉教授
私が映像プロジェクトのマネージャーとなって、すぐにピクチャーテルとの交渉が始まりました。そこからがもう大変なことになりまして(笑)
ピクチャーテルの製品をそのまま持ってくるのではなく、 NTT ブランドとしてきちんとした製品を出そうと画策しました。先ほど、ビル・ゲイツ氏がインターネットについて発言した話をしましたけれど、彼があの 1 年後に再来日したときには「マイクロソフトは、インターネットに向けて社内のリソースを集中する」という発言に変わっていました。マイクロソフトは一気に 戦略転換したんですね。もともとマイクロソフトは OS というソフトウェアの会社ですから、インターネットの世界でどう生き残っていくかをビル・ゲイツ氏自身が熟考したんでしょう。ビル・ゲイツ氏の優れた意思 決定だったと思います。その頃には我々も「これからはインターネットだ」と判断していましたから、総力をあげてインターネットを含めた ISDN を活用したサービスを提供していこうと考えていました。その 1 つのキラー・アプリケーションが「フェニックス」です。 1 年後の Windwos95 の発売に向けて、テレビ会議をピクチャーテルと共同開発しようということになりました。
栢野
Windwos95 ベースのテレビ会議システムですね。でも、当時アメリカは DOS/V 機が中心ですよね。一方、日本市場は半数以上が NEC の PC98 機だったはずです。
児玉教授
ピクチャーテルはどちらかというと DOS/V 機です。しかし、 NTT がすぐに世界市場に出ることは難しいだろう、まずは日本市場でシェアの大きい PC98 機をターゲットにするべきだということになり、 NEC さんの協力も得ながら開発が始まりました。「フェニックス」の開発には 1 年半くらいかかりましたね。
栢野
それが ISDN 普及の第一歩となったわけですね。
児玉教授
そうですね。さらに ISDN 回線と「フェニックス」は、 NTT 社内の意識改革にもつながりました。テレビ会議システムそのものは、「フェニックス」以前にも存在していたのですが、社内では「会議は顔を合わせて行うことに意味がある」「テレビ会議なんて意味がない」という考えが大多数でした。いかにも日本文化的ですよね。 また、それまで電話回線だけを扱っていた現場の人たちに対して、急に ISDN だ Windows95 だ「フェニックス」だと言ってもすぐには対応できません。当時の「フェニックス」はインストールも難しかったんですが、当然、現場の人たちがそのスキルを最初から持っているわけではありません。急にこのような想定外の新しい商品が登場すると、人間は拒否反応が先立ち心の障壁が形成されます。でも、お客様に「フェニックス」が欲しいと言われたら、インストールも含めてサポートしなければなりません。

栢野
その状況をどのように打破したんですか?
児玉教授
最初に NTT の全拠点に「フェニックス」を配備しました。「やりま SHOW マルチ作戦」という全社的プロジェクトが出来上がり、当時 150 拠点ほどあった全国拠点とマルチメディアビジネス開発部とを同時接続して、情報配信と共有、意思決定などを行うツールにしました。今でいうナレッジマネジ メントですね。
もちろん最初はうまくいきませんでした。「フェニックス」をインストールできないとか、回線に接続できないとかで、初回は 30 拠点くらいしか参加しなかったと記憶しています。でも、本社からの情報や各拠点の動向、お客様からの問い合わせ内容など、現場が必要としている情報をいち 早く得るには「フェニックス」を利用するしかないという意識が徐々に浸透して、 1 年後には 150 拠点すべてが参加し、「フェニックス」がないと仕事ができないという認識に変わっていきました。
栢野
児玉教授の講演の中で、映像ツールを導入するにはトップダウンとボトムアップの両方のアプローチが必要だと説明なさってらっしゃいますが、まさにその状況ですね。
児玉教授
面白いことに、 IT など新技術導入には必ず推進派と非推進派が出てくるんです。だからまずは、各拠点の推進派の人たちにテレビ会議の運営責任者になってもらいます。そういう 人たちの多くは、課長や係長などのミドルマネージャーなんですよ。彼らが中心となって、トップとボトムにだんだんと広がっていくんです。
栢野
お客様の事例にも同様のことがありました。推進派の人は積極的にシステムを活用します。非推進派の人でも、テレビ会議が開催されたら参加しなければなりません。そうして参加しているうちに「けっこういいものだな」と思うようになる。その人が、それまでテレビ会議に参加していなかった人との会議に同席すると、自然と操作を行うようになっていくんだそうです。そういう関わり方は、極めて日本的ですよね。
児玉教授
そうですね。

 

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