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第6回「“ビジュアルの力”で遠隔教育の未来を拓く」
神戸情報大学院大学 田村 武志教授 2/3

田村教授
海外では日本と違って国土が広いということから、遠隔教育が盛んに行われています。特にオーストラリアやカナダは遠隔教育に非常に熱心で、放送大学やインターネットを使った遠隔教育大学などのバーチャルユニバーシティがたくさんあり、多くの受講生が学んでいます。
共同研究を行っている関係でオーストラリアの某大学を訪問したことがあるのですが、その取り組みについて「なんてすごいんだろう」と驚かされました。何がすごいかというと、遠隔教育の教材開発センターがあって、そこで100人ほどの専任スタッフが教材の開発を行っているんです。
インストラクショナルデザイン(ID:教育コース開発)という学問がありまして、それを習得した専門家が教材を分析し、学習者の事情を考慮して教科書やCD-ROMに展開していくんです。もちろんネットワークが完備しているところには、日本と同じようにテレビ会議システムを使った遠隔講義を行います。教材開発センターの中には、配送センターが完備されており、世界中の学習者に教科書やCD-ROMを配信(配送)します。
日本では教材開発センターを併設している大学がありません。そこが日本と海外との一番大きな違いです。
栢野
人事コンサルタントの方と話をしている際に、海外と日本との違いとして、海外は成功例をモデル化するという話がありました。モデル化することによって効率化を図りシステム化していく。一方、日本ではモデル化せずに、それは個々の技として捉えているところに違いがあると話しておられました。

モデル化することで苦労せずにあるレベルまで実現できる、効率化できるというのは有効な手法だと思うんです。そういう観点から考えると、日本の遠隔教育の進歩のスピードが海外に比べて遅れてしまったのは、モデル化する力や文化の違いからかもしれませんね。
対談風景
ビジュアルには「力」があり、「パワー」がある!、テレビ会議システムを教育に使うことは大きな意味があるのです
栢野
受講スタイルが講師中心なのか学習者中心なのかというところの1つのキーワードは、レスポンスなのではないでしょうか。遠隔講義は、学習者からどうレスポンスを取るかがキーなのではないかと。それをシステムがどれだけサポートできるのか、が今後の課題なのかもしれません。実のところ、単にテレビ会議システムを繋いだだけでは、テレビモニターに映っていない学習者がどこまで理解できているのかということや、どういう反応をしているのかは分かりません。それをいかに把握していくのかが重要なんじゃないかと思うのです。
田村教授
田村教授それはかなり核心の部分ですね。教授法は人間の絡む部分で「いかに教えるか」や「学習者のレスポンスをどうとらえるか」がキーポイントとであることは間違いありません。しかし残念なことに、現在の教授法は旧態依然としたものです。

たとえばカメラの前で、講師が90分間一方的に説明するのが遠隔教育と思われているんです。それはとんでもない誤りです。一番大事なことは相手側に人間がいる、学習者が講義を聴いている、という認識です。遠隔地の学習者の様子(雰囲気)を講師がリアルタイムに感じとって、それに基づいて戦略を変え、講義をダイナミックに展開しなければならないのです。そうしないと学習者の多くは飽きてしまいます。その結果「遠隔講義というのは、眠くなるものなんですね・・・」と言う人も出て来ます。残念ながらそれが事実なんですよ。これからは遠隔教育教授法の研究がもっと、もっと必要なんです。
「離れた場所にいる受講生が講師のいる教室に来られないから、遠隔授業で代替えする」、という人がおりますが、それはまったくおかしな話です。遠隔授業は決して対面授業の代替ではありません。まったく違う次元のものだと思います。対面授業の代替として遠隔講義をやると考えるから様々なズレが生じてくるのではないでしょうか。
ある方が「ビジュアルには力がある」「パワーがある」と言いました。最近の会議ではよくプロジェクターを使いますけれど、あれもビジュアルですよね。静止画像や動画、音声を使うテレビ会議システムは、ビジュアルそのものです。テレビ会議システムを使って教育を実現するということは、要は「力がある」「パワーがある」ということです。つまり、テレビ会議システムに付加価値をつけて、対面授業ではできないことを実現しなければならないのです。なぜならば「ビジュアルには力がある」「パワーがある」からです。そのリソースを使わない手はありません。
栢野
我々の事例になりますが、200拠点を接続して会議を行うというお客様がいらっしゃいます。社長ご自身が200拠点に対してメッセージを発信します。テレビ会議システムを使うことで、「ビジュアルの力」が瞬間的に行使されるわけです。
栢野この事例では、レスポンスシステムという形で、テレビ会議システムへ付加価値をつけました。
たとえば、200拠点に対してオペレータさんが質問をテキスト配信します。それに対して「賛成です」とか「反対です」とか「よく分かりません」などの反応を各支店がボタンで投票できるようになっているんです。そのデータが本社へ伝送されて、何名が賛成で何名が反対かなどの結果がリアルタイムで集計されていきます。さらにサーバへ蓄積されていきます。リアルタイムでのレスポンスも取れますし、過去の履歴も参照できるシステムです。教育でも、そのようなシステムが作れないかなというのが今後の課題ですね。
田村教授
レスポンスは教育原理の基本です。東京工業大学の名誉教授に坂元昂先生という方がいらっしゃって、「三方向コミュニケーション」という教育原理を提唱されました。
たとえば、「皆さん、こういうことについてどう思いますか?(刺激)」と質問します。すると、学習者が「それはこういうことですよね(反応)」と答える。これは二(双)方向ですよね。三方向というのは、さらに講師が「Aさん、素晴らしいですね。そういう発想がよくできましたね(強化)」と返す。つまり、即時の「フォローアップ」が重要であるということです。「行って返ってまた行く」と、先生はおっしゃっていました。三方向コミュニケーションは、教育の原理であると同時に、重要な遠隔教育教授法の一つです。
二方向でも一方通行よりはいいんですが、「素晴らしいですね」とさらにレスポンスを返すことで、学習者は「ああ、自分の考えでよかったんだ」と解釈し、自信を深めることになります。このように、教育原理に基づいた教授法を含めて、いろいろな付加価値をシステムに付け加えるのが、これからの遠隔教育の重要ポイントでしょう。
遠隔教育だからこその効果があります。決して遠隔講義は対面授業の代替ではないんです
田村教授
これまで行った遠隔講義で、私自身、優れた事例だと感じているものが2、3あります。1つは、北海道と名古屋、中国、東京の4拠点を接続して行った遠隔講義の経験です。その講義の後半に、講師が「では皆さん、これから10分間あげますから、これまで聞いたレクチャーを基に各拠点(グループ)で話し合ってA4の用紙1枚にまとめてください。そして、その内容をそれぞれの拠点から発表してもらいます」と言いました。それがすごく盛り上がったんです。
「北海道はこういう発表だった」「中国ではこんな風に考えていたのか」とお互いの反応が見えますし、講師の知識を一方的に受け取るのではなく、距離を超えた参加型の授業になりました。遠隔講義ならではの究極の教授法です。
栢野
私が田村教授をお手伝いさせていただいた中で印象に残っているのは、北海道と東京、大阪2ヶ所をテレビ会議システムで接続して行った講義です。ゼミだったと記憶していますが。
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