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Microsoft Teamsとテレビ会議専用機連携 第四回
パートナー(CSP)選びが重要に!移行プロジェクトで見えてきたMicrosoft Office 365にまつわる活用Tips

パートナー(CSP)選びが重要に!移行プロジェクトで見えてきたMicrosoft Office 365にまつわる活用Tips

 
第四回パートナー(CSP)選びが重要に! 移行プロジェクトで見えてきたMicrosoft Office 365にまつわる活用Tips

コロナ禍の影響でテレワーク環境が進むなか、多くの企業がコミュニケーション基盤として採用を進めているMicrosoft Teams。すでに契約しているMicrosoft Office 365ライセンスを有効活用し、日常的なミーティングや会議の基盤としてMicrosoft Teamsを利用している企業が増えています。実はVTVジャパンでは、ビジネス的な観点からさまざまなコラボレーションツールを駆使してきましたが、改めてMicrosoft Office 365のノウハウを蓄積するべく、メールやチャットなどのコラボレーション基盤をMicrosoft Office 365へ移行しました。今回は、そんな移行の経緯や実際の活用状況などについて振り返りながら、Microsoft Office 365活用の“あるある”について共有していきます。

Microsoft Office 365 導入以前の状況

今回の移行は、多くの企業でコラボレーションツールとしてMicrosoft Teamsが広く利用されている現状を鑑み、業務の基盤として広く普及しているMicrosoft Office 365 が持つ機能をこれまで以上に活用することで、知見やノウハウを社内に蓄積し、ビジネスに生かしていくことが大きな目的の1つです。

これまでは、企業ごとに最適なコラボレーション環境を提供するというビジネス上の視点から、社内でさまざまなツールを駆使して業務を行ってきました。スケジューラーについては「サイボウズ Office」、メールは「Thunderbird」、チャットツールは「Skype for Business」、掲示板は自社構築の社内SNSといった環境です。ただし、チャットツールなどは部署によって個別最適化された形で活用されており、例えばマーケティング部門では「Cisco Webex Teams」を活用するなど乱立した状況にありました。我々がビジネス的にさまざまなベンダーのソリューションを扱っていることから、複数のツールを敢えて使っていたのです。

当然ですが、複数のツールを運用することで運用管理が煩雑になってしまうだけでなく、何の情報をどのツールに流していくのかのルールが明確でなかったため、現場として属人化してしまう傾向にありました。そのため、部署をまたがったやり取りがツール上で行われず、わざわざ席に尋ねていくという状況も散見されていたのです。そんな状況を打開するべく、Microsoft Office 365 にて基盤を共通化し、ルールの徹底や情報ガバナンスの強化を図っていくことを目指しました。もちろん、ツールを併用することによって膨らんでいたライセンスコストの圧縮も期待された効果の1つです。

営業チーム内での作業依頼にはLINEグループが、エンジニア同士の進捗確認にはSlackが使われるなど、ある程度部署ごとに個別のツールを導入、活用して情報共有しているなど、我々同様の課題が顕在化している企業も少なくないことでしょう。

現在のコラボレーション環境

今回は、社内のコラボレーション基盤をMicrosoft Office 365 に統合するプロジェクトです。具体的には、Microsoft Exchange Onlineをメールサーバーとして活用し、スケジュール及び会議室/備品管理などはOutlookと連携させ、各クライアントPCから共有できる環境を構築しました。チャットやオンライン上での打ち合わせなどはMicrosoft Teamのビデオ会議を活用することを想定しました。なお、ライセンス契約プランはMicrosoft 365 Business Standardですが、実は以前からOfficeアプリケーションのためにMicrosoft Office 365 自体は契約しており、それを有効活用しています。

現在の利用状況ですが、Microsoft Office 365 にてコラボレーション環境を統合したことで、他部署も含めたチャット利用や手軽なミーティングがMicrosoft Teamsによって容易になり、活用頻度はかなり高まっています。導入当初はチャットやビデオ会議は数十件程度でしたが、リリースしてから3か月ほど経過した段階でチャットは5万メッセージを超え、Microsoft Teamsでのビデオ通話/会議(チャット/チーム)が300件ほどにまで頻度が拡大しています。営業チーム内では情報共有のスレッドがMicrosoft Teamsのチャット内で立ち上がり、以前の掲示板よりもライトな情報共有が活発に行われています。使い勝手の良さから、公に質問しにくいちょっとした確認が、チャットを通じて特定のメンバーとやり取りできるようになっているのも大きな効果の1つとなっています。

従来から行われてきたコラボレーションの延長線上ではあるものの、Microsoft Office 365 およびMicrosoft Teamsが社内に根付きつつあると言っても過言ではありません。

Microsoft Office 365 の設計から運用に至るTips

Microsoft Office 365 という新たな環境を整備したことで、新たな気づきが数多く得られています。企業におけるコラボレーション環境づくりに向けてのノウハウとしてもお役立ていただける面があることから、いくつか紹介しておきます。

ライセンス調達先の支援内容が重要に

Microsoft Office 365 を中心に業務基盤を整備するためには、ライセンス調達先の選定が重要になってきます。Microsoft Office 365 は単に購入すれば簡単に使えるというわけではなく、ソリューション全体を俯瞰できる、体系立てた知識と経験が必要。だからこそ、調達先となるパートナー(CSP=クラウドソリューションプロバイダーとも呼ばれる)の支援が欠かないものになるのです。

実際にパートナーを探す際には、MicrosoftのHP上から地域や企業規模、サービス種類などを軸にCSPが検索できるようになっています。実際に検索したことのある方ならお判りだと思いますが、Microsoft Office 365 を扱っている認定代理店だけでも無数にあり、自社で最適なパートナーを探し出していくのはかなり困難です。しかも、支援内容やコストはパートナー自身が設定しているもので、提供される支援の範囲も費用感もまちまちなのが実態です。

パートナー選びは、自社が求める支援や描いている運用像を明確にしたうえで、どんなことがどの程度の費用で可能なのかを判断していく必要があります。また、当然既存環境からの移行についても意識しながら、最良なパートナーを選択していくべきです。

セキュリティと移行、将来的な拡張を見極める

運用設計において重要になってくるものの1つに、セキュリティ対策が挙げられます。Microsoft Office 365 を購入するだけでは自社にあったセキュリティ設計が難しいケースも少なくありません。そのため、契約ライセンスに含まれるセキュリティ機能とともに、外部から必要な機能を調達していくことが必要になるケースが多く、その意味でも購入先であるパートナーの支援が欠かせません。特にセキュリティを重視したのは、業務基盤としてMicrosoft Office 365 に集約することで管理面や情報ガバナンスの面でメリットが出てくる半面、Microsoft Office 365 のアカウントが漏洩した場合は全ての情報が取得されてしまうリスクが高まるためです。

今回社内では、多要素認証を取り入れたセキュリティ対策を導入しました。ID/Pass(知識情報)、デバイス証明書(所持情報)を利用した多要素認証、さらには特定のネットワーク経由でしかMicrosoft Office 365 のテナントにアクセスできないといった“場所”を制限しました。自社が求めるセキュリティ環境が整備できるかどうかしっかりと見極めましょう。

また、既存環境からのスムーズな移行が可能かどうかという点も重視したポイントの1つ。ドメインも含めたメール環境の移行が行われるため、正副の環境ではなく特定のタイミングに一気に切り替える必要があり、業務に影響を与えることなく安全に移行できるかどうかは重要です。今回は、社内での移行環境の整備はもちろん、パートナーからの強力な支援も得てうまく移行することができました。

さらに、将来的なクラウドサービス活用のためのマイグレーションプロセスが描けるかどうかという視点も重視しました。現状のライセンスではAzure Active Directory(Azure AD)がフリープランとして含まれており、SAMLによるSSO(Single Sign On)環境を整備することは可能です。ただし、オンプレミスの業務アプリケーションや外部のクラウド環境で動作するSaaSなどへのSSOは将来的に必要になってくる(既に導入済みの企業あり)可能性が高く、使い勝手を高めるためのSSO環境がうまく拡張できるかどうかについても考慮する必要があります。

Microsoft Office 365 全体の知識が必要

Microsoft Office 365 を業務基盤の中心として運用していくためには、それぞれ単体の機能はもちろん、Microsoft Office 365 全体の理解が求められます。その際には、Microsoftが公開している情報を参考にしていくことになりますが、Microsoft Office 365 に関する情報は膨大で、最低限の知識を習得するだけでも時間と労力がかかります。今回はライセンスを購入したパートナーの支援を受けて、徐々に知識を獲得していきましたが、実際には今でも苦労している面があるのは否めません。

例えば以前グループウェア単体で可能だった設備予約の機能については、Exchange Online上で会議室のマスターを作成し、その情報をOutlookに引っ張ってくるといった連携が必要になりますし、当然メールサーバーとして利用するExchange Onlineだけに、サーバアドレスや送受信ポート、DNS設定など、メールサーバーそのものの知識も求められます。Microsoft OneDriveを活用すればファイル共有も実質的には可能ですが、外部とどのように情報共有するのかといったセキュリティの視点から運用設計が必要です。

いずれにせよ、各機能を有機的に連携させていくことで利便性が向上するMicrosoft Office 365 をうまく利用するためには、Microsoft Office 365 全体のノウハウは十分に獲得していかなければいけません。

クラウドサービスのデメリット

これまでコラボレーション基盤として個別のパッケージ製品を利用してきましたが、Microsoft Office 365 はグローバルなパブリッククラウドサービスとして、多くの企業が共用で利用するシェアサービス。それゆえ、以前のように“痒い所に手が届く”ようなサービス品質が十分確保できないケースが出てくることは念頭に置いておくべきです。

具体的なエピソードでは、稼働初日に利用者から“メールの送受信が遅延しているのでは?”という問い合わせが入りました。初日はメールの設定情報などがExchange Onlineに反映されるタイミングだっただけでなく、既に入力済みのサイボウズ Officeのスケジュール情報をExchange Online(Outlook側)に転記する従業員が殺到。その結果、VTVジャパンが持つテナント上のExchange Onlineの負荷が多少高くなったことが1つの要因と分析しています。

ただし、具体的な原因究明には至っていません。実際にサポートへ問い合わせを行ってみたものの、グローバルな基盤であるExchange Online側ではメール配送遅延が発生していないことから、詳細な回答まではもらうことができませんでした。もちろん、ログ解析も含めて原因特定の手段はあるはずですが、多くのユーザーが利用するグローバルなサービスだけに、個別に導入してきたオンプレミスの製品同様のサービス品質は維持できないケースもあります。Microsoft Office 365 に限った話ではありませんがクラウドサービスにおいて、トラブル発生時に自社でできることはなく、復旧を待つ以外の手段が取れません。オンプレミスならすぐに技術者が対応することで復旧までの時間を短縮することも可能ですが、それもできないためサービス提供側の対応に依存してしまうことになります。コラボレーション基盤であるがゆえに、業務への影響は大きなものになりかねないため、代替手段などを検討することも考えておきましょう。

運用に乗せていくための工夫

従来環境と様変わりすることになるため、現場に如何に負担が少なく利用してもらうための環境づくりは重要です。特に大きく変わるのはスケジュール管理の部分で、レイアウトから大きく異なってくるため、ある程度の支障が出ることは覚悟して運用側でも検討を重ねました。既にMicrosoft Office 365 を運用しているユーザー企業にヒアリングした感触からも、最終的には現場に慣れてもらうしかないのが実態だと情報を得ていました。例えば会議予約の取り方が分からないといった声は当初現場から寄せられたものの、仕様変更が難しい部分もあるため、時間をかけて慣れてもらったのが正直なところです。

また今回新たに多要素認証を取り入れたことで、クライアント側に今まで表示されていなかったデバイス認証の画面が新たに追加されるなど、認証手順も従来とは異なる部分がでてきました。そのため、ドキュメントを用意し、説明会にてその違いをしっかりと理解してもらうような場も提供しています。

勉強会では、事前に決めたルールに関する情報も周知徹底しています。クラウドサービスを業務基盤の中心に据えるため、社内外での情報共有の区分けやどんな情報をどのツールに乗せていくのかといったルールをしっかり徹底させることが必要です。幸いにして、我々はコラボレーション環境をビジネスとして提供しているため、社員はITツールに対する抵抗感がない点は大きなアドバンテージでした。

設計も含めてプロジェクトにはお金がかかる

既存環境の状況によりますが、Microsoft Office 365 の導入についてはネットワーク設計の見直しやセキュリティ対策の強化、そして効率的な運用に向けての事前設計が重要になってきます。この知見を獲得することも移行目的の1つだけに、今回はパートナーからの支援も受けながら、基本的な設計から日々の運用までを自前で行っています。実は外部のパートナーに設計から運用までをお願いした場合、日常的なメンテナンスも含めて委託することになり、会社の規模(社員数が数百人以上の場合)にもよりますが、数千万規模の費用が発生すると回答を得ています。

我々のような中小規模の場合は、社内に適切な人材を確保し、ある程度自前で運用していくことが現実的ではないでしょうか。大企業の場合は、Microsoft Office 365 立ち上げのプロジェクトからパートナーを参画させるケースもあれば、サードパーティのベンダーをスポットで契約して構築する、常駐しているパートナーに設計から移行、運用まで委託するなど、いろんなパターンが現実的な事例として聞こえてきています。いずれにせよ、Microsoft Office 365 の移行に伴う運用設計などには、費用がそれなりに発生することを意識しておくべきです。

機能範囲的にもセキュリティ的にも一人で管理するのは現実的に難しい

実際にMicrosoft Office 365 を運用してみると、現実的に1人ですべてを管理していくのは難しいことが分かります。これまではスケジューラーとメール、Web会議ツールなど、それぞれ異なるツールだったこともあり、ある意味閉じた環境でそれぞれの担当者が個別に管理してきました。コラボレーション環境がMicrosoft Office 365 に統合できたからといって、確かに機能が有機的に連携させるものの機能そのものはバラバラであり、1人では範囲が広すぎるのが現実です。特にMicrosoft Office 365 組織内のメンテナンスやセキュリティ上の観点から“全体管理者(=グローバル管理者)”は最低2~3人を配置することは必要になってくるというのが経験則から見えてきます。

また、情報管理という意味でも、限定された1人のメンバーが特権的に運用できてしまうと、当然ながらリスクも出てきます。特に統合化された機能を提供するMicrosoft Office 365 だけに、機微なメールや機密ファイルも含めさまざまな情報がMicrosoft Office 365 上でやり取りされることになるため、情報ガバナンスの観点からも日常的な情報管理を1人のメンバーにゆだねることは避けるべきです。

プロジェクトの今後

現在はMicrosoft Office 365 の運用を開始したばかりであり、今後は管理の効率化だけに留まらず、近年注目を集めているDXについても進めていくことが重要だと考えています。社外とのコラボレーションをどのように行っていくのか、情報セキュリティの観点を踏まえてしっかりと検討していく段階にあります。

また既存の専用機とどのようにMicrosoft Teamsを連携させていけばいいのかについての要望も現場から寄せられており、まさに多くの企業が直面している課題に、我々としても今まさに取り組んでいるところです。このプロジェクトで得た知見や経験は、多くの企業にノウハウとして還元できることになるはずです。もしMicrosoft Office 365 導入やコラボレーション環境の整備についてお悩みがあれば、ぜひご相談ください。

テレビ会議専用機とMicrosoft Teamsとの連携の具体的な取り組みやその課題については、次回以降に詳しくお伝えできればと考えています。