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量子暗号化方式

量子暗号化方式
Quantum Cryptography

量子力学における不確定性原理*1 に基づいて、絶対に破られない暗号通信を実現する方式。現在テレビ会議で広く使われている AES (Advanced Encryption Standard) や RSA (Rivest-Shamir-Adleman、公開鍵暗号) などの暗号方式は、大きな素数 2 個の積から素因数分解によりもとの 2 個の素数を見つけ出すには莫大な計算時間がかかることから、実用上は安全と見なされている。しかし、高度な並列処理が可能な量子コンピュータが出現すれば、事態は一変し、必要な素因数分解が簡単にできてしまう。
暗号通信では、送るべきメッセージに暗号鍵を使って作った暗号符号列を混ぜ合わせて送信し、受信側では同じ暗号鍵から作った暗号符号列を差し引いて元のメッセージを復元する。暗号通信の安全性は、暗号化されたメッセージから暗号符号列を見つけ出すことが困難なような暗号化アルゴリズムと送受信機間で共有する暗号鍵をいかに安全に配送できるかにかかっている。
理論的に解読不能と知られている暗号方式にワンタイム・パッド暗号がある。これはメッセージと同じ長さのランダムな暗号符号列(暗号鍵)を用い、一度使った暗号鍵は二度と使わない方式である。なお、メッセージと暗号鍵との混ぜ合わせ方は簡単な方法でもかまわない。量子暗号化方式は、ワンタイム・パッド暗号に用いる暗号鍵を、量子力学に基づく方法で安全に配送する。
暗号鍵の配送は、具体的には光子を光ファイバに通し、変極という物理的性質を用いることで行われる*2 。変極の方向が鍵の情報を伝える。変極は+スキーム( 0 度が "0" 、 90度が "1" )と×スキーム( -45 度が "0" 、 +45 度が "1" )が任意に切り替えられ、受信側はスキームの情報がないため、いずれかを適当にあてはめて送られた情報が "0" か "1" かを判定する。スキームが合っていれば正しい情報の受信となり、そうでなければ意味のない情報になる。暗号鍵の配送後、別途適用スキームの情報を送信側から受信側に送り、また受信側は正しくスキームを適用したのはどのビットであったかを送信側に伝える。これにより、送受信機間で共通の秘密鍵情報を共有することができる。暗号鍵の配送が途中で盗聴されると不確定性原理により光子の変極状態が変わり、受信側で盗聴の事実が判明するので、その暗号鍵(ワンタイム・パッド)は廃棄する。
2010年10月14日付け独立行政法人情報通信研究機構報道資料*3 によると、秘密鍵の生成速度は 45km の光ファイバ回線で毎秒約 10 万ビット、が最新の研究成果である。

  • *1不確定性原理 : 量子力学の世界では、粒子の位置を正確に測ろうとすると運動量に影響を及ぼしてその測定結果はあいまいになり、逆に運動量を正確に測ろうとすると位置の測定結果はあいまいになる。
  • *2参考資料 : サイモン・シン『暗号解読』第 VIII 章、新潮社、 2001 年
  • *3参考資料 :  http://www2.nict.go.jp/pub/whatsnew/press/h22/101014/101014.html
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